吹雪く水月2
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
その永海の平和的な疑問にエイジがマジレスで答える。
「今のBISで蕎麦を射出したら、中身はグチャグチャになる。BISは運搬速度こそ優れているけれど、中身が魔鉄器という前提があるから中で発生するG等は全く考慮されていない。飲食物を入れることを前提にするなら消音や消風機能を始めとしたいくつかの機能を消す必要がある」
「ええっ……あー、まぁ魔鉄器って基本100%魔鉄製だもんなぁ、物理的な要素じゃ壊れないよなぁ」
そう、BISという滅茶苦茶なシステムを実現できたのは、中身が物理破壊不能の魔鉄器だからという部分が大きい。恐らく最初にシステムを考案した大学生は、その中身の問題をこれから解決していこうとしていたのだろう。
「しかもそれじゃ中身が無事でもデリバリー到達と同時に衝撃破で注文した人がスプラッシュしちゃいそ〜……うえ、想像したら思いのほかグロいよ美杏……」
「いや、自分で勝手に想像しといてそんな事言われても。いくら双子でもそこまで気持ち共有できないよ美音……」
何事も光があれば闇がある。ちなみにBISは中に生物が入っている場合、絶対に開いた蓋を開けたまま停止するセーフティもあるらしい。中にうっかり入ったまま射出されたらそれはただの処刑装置だから納得だ。
「にしても、何で先生は急にこんなの渡したんだろ」
そう呟くエデンの視線の先に、エイジの手首に括られた伝票が映る。身体に固定するための自在伸縮魔鉄チェーンが仕込まれたそれは、本当に戦う人間にこそ必要なものだ。授業後こっそりスマホで調べてみたが、学生にタグを持たせるなど殆どないことのようだ。ネット情報なので正確性は若干の不安があるが、一般的でないことくらいは察せる。
私の疑問に、周囲はそれほど気にした風でもなく答えた。
「町中で使うってのはいかにも実践的だったじゃん。路地裏でも全く壁にぶつからず降りてくるのはマジで吃驚したけど、そんだけ有用だって知らせたかったんじゃね?」
「美杏としては、とりあえず貰えるものは貰っておけばいいかなと!」
「美音としてもそんな感じでいいかなと!」
「………」
このクラスで一番思慮が浅そうな人たちに聞いてしまったことをエデンは内心でちょっぴり後悔したが、人のことを言える程思慮は深くないので何も言えなかった。最後の希望を込めてエイジを見やると、エデンの期待は裏切らない彼はすぐに答える。
「先生が生徒に順守させるルールの一つ……必ず生きて学校を卒業すること。その達成確率を少しでも上昇させるためのツールとして渡したと考えられる」
「つまり、魔鉄器を使わないといけないような大事件に巻き込まれた時のため?」
「先生は個人。生徒全員を監視することも全員を常に護衛することもできない。だからせめて目の届かない場所で
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ