滴る氷柱4
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にならないようにしながら応援するだけである。
正直に言って、とてももどかしい。
エイジに守られる自分はエイジを守るべきだと思うから、余計に。
でも、エイジは今日、今度こそエデンを守るために秘策を用意したと言っていた。
今回こそ、最後まで自分もエデンも守り切る。
それがエイジが訓練前にかけてきた言葉だ。
(信じてるからね、エイジ)
自分を守ってくれることを、ではない。
エイジが自ら壁を破ると宣言したことを、だ。
現実には、氷での迎撃も虚しく八千夜は着実に必殺の間合いに近づきつつある。
エイジは状況が悪いと判断したか、エデンを庇う氷を分厚くしながら後方へと氷の足場を作って滑る。ただし態勢は八千夜を向いたままだ。一瞬でも目を離したらエデンの方にいくからと、最近のエイジは普通転んでしまうような無茶な態勢を平気でする。普通はそれで姿勢が不安定になるのだが、エイジの場合それは結果的に自分が有利になる確かな理論に基づいているようだ。
だが、八千夜の接近は止まらない。今回はエイジの妨害も激しいが、驚いたことに尻尾を氷に突き立てたりして次々に突破していく。
「――今回は随分頑張りましたが、もうすぐフィナーレです」
「そうだね」
こうして接近した八千夜がエイジの首筋に爪を突き付け、リック先生がそこまで、と叫んで試合が終わる。それが幾度となく繰り返されたパターン。
しかし、今日はその光景が再現されることはない。
「近づいてくる相手を遠ざけても、朧さんみたいに一瞬で距離を詰められたら意味がない。接近戦に対抗するには、接近戦をするしかない。だったら……」
エイジが虚空に手を翳し、小指から順に何かを握るように手のひらを閉じてゆく。
「Mining, your blood mine, Warmong――来たれ雹烈、追白せし者を拒む棘の剣」
エイジの唇が、聞きなれない言葉を紡ぐ。とくん、と身体の奥底に仕舞われた鉄脈が震え、オーバーイメージが魔鉄器を通じてエイジの眼前に溢れ出した。
強い――起動句の時とは比べ物にならない程の存在感が凝縮していく。
これは空間に具現化するエイジの意志の塊だ。
魂が凍てつく錯覚を覚える程の、超常的な拒絶意志は、やがて一つの刃を顕現させる。
「拒止の風剣」
それは、深い碧だった。果たしてその刀身が固形物なのか、それとも霧に映る光のように実体の存在しないものなのかも見ただけでは分からない。ただ、意識さえ吸い込んでしまいそうなほど深い碧の美しさと同梱して、それに触れることを本能が忌避するような恐ろしさを内包していた。
接近していた八千夜の顔が驚愕に覆われる。
「有詠唱(
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