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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
滴る氷柱2
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 というか、そういえば自分もエイジと喧嘩しない。喧嘩を売るといつも訳の分かってない顔で「ご、ごめん」と謝るものだから喧嘩が成立しない。そのうち自分がいじめているみたいで嫌になって止めてしまう。

 マギとプザイもそんな感じで仲が良ければいいのに、世の中上手くはいかないものだ。
 こんな調子では、「ラバルナ支配時代が理想だった!」と街頭で騒いでる旧帝国至上主義(ラバルニズム)の宗教家が世を嘆くのも、まったくの妄言ではないのだと思い知らされる。



 = =



「リック先生とルーシャ先生ってさー、なんかちょっと不思議な関係な気がしね?」

 休み時間、ノートの取れていなかった部分をエイジの協力で書き写していると、横で同じことをしていた永海がそんなことを言った。

「何が?」
「籍入れてるって話だけどさぁ、ルーシャ先生はリック先生のこと名前で呼ぶのに、リック先生の方は『副担任』としか呼ばねーじゃん?だからこう、継明(※)時代のオヤジみたいなのなのかなぁ、なんて思ってたんだけど、結構ルーシャ先生が甘えても嫌な顔しないからさ」
「あー。確かに美杏もそれ気になってたー」
「美音もー!」

(※継明(けいめい)……現実における昭和、つまり前の元号)

 いつの間にか双子や他のメンツも集まる。
 なにせ少人数の教室だから、だいたいの話にはいつの間にか全員参加になってしまう。

 それにしても二人の関係か、とエデンは思う。
 確かにちょっと夫婦っぽくはないが、仲の悪さも一切感じない。
 それに、と自分の家庭を思い出しながらエデンは口を開く。

「人前じゃ他人行儀にしてもプライベートではべったりってこともあるじゃん」
「あー、なるほどね。部屋に戻った途端に立場が逆転!リック先生はケダモノに……!それとも甘えん坊化!?キャー!」
「いや、それはないと思うよ美杏……なんの漫画の読みすぎ?」

 珍しく意見の一致しない古芥子姉妹。見た目も口調も普段はそっくりなのに、こういうときはだいたい美音の方が冷静である。しかし空気の読めてない発言をポロっと漏らすもの美音なので、どっちがマトモかは甲乙つけがたい。
 
「夫婦と言やぁ、暁ん家って見ず知らずの氷室をイキナリ養子にしたんだよな。どうなん、それで関係拗れたりしねーの?」
「ないなぁ。ウチはママは主導権握ってるから、ママが譲らないって言ったらそれが家族の決定になりがちなの。パパは流石にちょっと考えたみたいだけど」
「でも優しいよ、パパ。シャンプーで髪の毛洗ってくれたり、昔の家族のこと教えてくれたりしたし。血が繋がってなくてもお前は暁家の子供だ、って」
「ま、パパも基本お人よしだもんねー」

 恐らく家族に聞かれれば「お前が言うな」と言われる気もするが
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