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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
皐月の雹4
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、また目には見えんが三重の普遍障壁が張られている。もちろん三重にしても抜けるときは抜けるから、くれぐれも適当にぶっ放すなよ。特に氷室、お前の術みたいに物理的質量を伴う術は普遍障壁が効きにくい」

 普遍障壁とは、アストラル干渉にて通常空間を通常のままにするものだ。見ている分には何も存在しないように見えるが、障壁があると鉄脈術の威力が減退する。ただ、これは先生の言った通り、エネルギーを放出するタイプの鉄脈術以外にはそれほど減退効果が望めない。これも授業で習った範囲だ。
 しかし、とエデンは首を傾げる。確かにエイジの氷はかなりの質量だが、グラウンドを突破するほどのものを生成したり発射したりできるものなのだろうか。

「エイジの能力ってそこまで広範囲に放出できるんですか?」
「見たところ、本人のやる気次第だな。術の燃料はアストラルからの現実改変、つまり理論上は水道の蛇口みたいに出しっぱなしにできる。エイジはさっき自分ですぐに術を止めたが、実際には発動状態になった場合は集中力の続く限りいくらでも氷の体積を拡大させることが出来る筈だ。無論、暁も氷室がやりすぎそうなら止めてやれ」

 まぁ、魔女は自らの意思で製鉄師に術を抑制させる術を持たないのだが、そこはパートナーとして言葉や行動で示せということだろう。というか、集中力さえ続けば悟のように術発動状態をあんなに継続できるのか、と思う。実際に体験してみると、鉄脈術は奥が深いものだ。

「さて……これで五組中四組の鉄脈術を確認した。後はお前たちだ、戌亥と千宮」
「二人にとっては今更かもしれないけど、先生たちもちゃんと確認するのがお仕事だからねー」
「そういうことだ。だから――遠慮なく(・ ・ ・ ・)かかってこい(・ ・ ・ ・ ・ ・)。事情は知ってる」
「――本当の本当に、宜しいのですね?わたくし、責任は取りませんわよ?」
「何事かあれば他ならぬ俺が取らせてやる。……副担任、生徒たちを」
「はいはーい、皆さんこちらへずずいっと!これから模擬戦に入るから50メートルは距離を取ってね?」

 ルーシャ先生が八代夜とあざね以外の全員を距離を取った範囲へ移動させる。
 事情は呑み込めないが、予想はつく。先生のは分かるが、どうやら八千夜の鉄脈術はかなり危険な部類らしい。知らぬうち、全員に緊張感が漂う。

「……お嬢様、あざねはいつでも」
「宜しい。では、参ります。マイニング・ユアブラッドマイン――」
「ローディング・マイブラッドユアーズ」

 八代夜があざねに手を差し出し、あざねはその手を受け止めて恭しく手の甲に口づけをする。
 本来なら口づけは男性の行うものだった筈だが、それが彼女たちのトリガーなのだろう。

鍛鉄(トライン)――………」

 それは、クラスの皆の耳
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