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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
皐月の雹4
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し、微笑んだ。どうやら彼が解説してくれるようにという彼女の策略だったようだ。出来るメイドである。ウチに一人欲しいがそういうわけにもいかないので、エイジを執事にしてみようか。
 ……燕尾服を着てお嬢様とか言ってくるエイジを想像し、ちょっとありかも、とエデンは一瞬真面目に検討した。乙女としての好奇心を擽るものがある。

「古芥子姉妹の発動させた鉄脈術は簡単に言えば炎の術だ。あのリングから膨大な熱線を発射するどこぞの巨大怪獣みたいなものだ。詳しい解析結果は省く。で、何でいきなりあの暴力教師が棍棒みたいな鉄の塊振り回したかというとだな……発射された熱線が校舎直撃コースに乗ってたから、あの野郎風圧で無理やり上に逸らしやがった」

 風を起こして、ではなくぶん回した風圧で、というのが、恐ろしさ半分納得半分だ。
 術の発動前の時点で先生からは途方もないエネルギーを感じた。本人も肉体強化系の術を使うと言っていたし、これで術を発動させれば氷塊を跡形もなく蒸発させる熱量もなんとかしてしまうのだろう。

 と、そこまで考え、ふと疑問が頭をよぎる。

「あれ?先生、詠唱してたっけ?」
「してた。ただし高速言語(ハイワード)でな」
「は」
「い」
「わー」
「ど?」

 天馬、朧、永海、そしてエデンが首を傾げる。ここで悟だけに説明させぬ気遣いか、あざねが捕捉説明した。

高速言語(ハイワード)とは、言語を用いたより効率的なコミュニケーション、および詠唱の短縮のために開発された新機軸言語です。発祥は星詠みの国であり、コミュニケーションに必要な最低限の文法と発音にまで言語を圧縮します。これによって通常どんなに急いでも平均三秒は必要な詠唱を一秒まで短縮可能です」
「戦場じゃ接敵してから攻撃するまでに三秒は長すぎるからな。各国の軍等では緊急事態において一秒でも早く鉄脈術を発動させるため高速言語を学習させてる。尤も、完全な習得には早くとも大学で2年は勉強しなけりゃ覚えられないような代物だから、術の発動に必要な部分限定だ。完全に使いこなせる奴なんぞよっぽどの物好き、SFや言語マニア、あとは日常的に使ってるやつもいる星詠み連中くらいだろう」
「――もちろんお前らは覚えなくていいぞ。覚えるなら英語覚えてからにしろ。高速言語にも弱点はあるしな」
「あ、先生」

 と、そもそもの発端であるリック先生が近づいてくる。どうやら危ない鉄脈術を考えなしに大放出した古芥子姉妹にきつい説教とげんこつをお見舞いしたらしく、二人の頭には漫画のようなたんこぶが出来ている。

「権力のオーボーだぁ……」
「くすん、体罰反対……」
「例年一人はこういう馬鹿がとんでもない術を無差別にぶっ放す。だから流れ弾が建築物や人に命中しないように聖学校のグラウンドは過剰なまでに広く
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