皐月の雹3
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ぐらいの現実歪曲になるとランク差があっても直撃すればダメージは通る。多少減退はされるが、ファンタジーのRPGで言えば魔法で防御力を上げた、ぐらいのものである。つまり、そもそも食らうダメージが大きければ多少の防御力など大して関係ない。魔女に関しては鉄脈の源であるためか更に強い防壁が展開されるが、これもやっぱり根幹では変わらないので痛いものは痛いし刺さるものは刺さる。
そしてもう一つ。実際のところ、この魔鉄の加護とは鎧というよりパワードスーツで、身体能力を上昇させる効果もある。防御力にばかり目が行ってしまいがちなのは、身体能力の上昇度が衝撃的な防御性能に比べかなり緩やかなものであるから目が行きにくいのが原因だろう。
これは完全に余談だが、アーマーって言い方だと紛らわしいから名前変えないかという話もあるらしい。ただ、これに対して親ラバルナ派が猛烈にケチをつけるために実現には至っていないようだ。誉れ高きラバルナの名付を愚弄するとは何事だー、とのことである。
面倒くさい大人、とエデンは内心ため息をついた。
「――それでだ。起動句の詠唱を終えてABを展開すると、このアーマーを魔女の一存で多少なりとも強化できるようになる。浜丘は恐らく寒さから逃れたい程度しか考えていなかったんだろうが、今回はその防衛本能のおこぼれで永居も比較的寒さに耐性を持ったわけだ」
「なるほど〜、それで寒がり方にバラつきがあったんだ……」
「ただ、この強化度の調整については相応の戦闘経験を積まなければ難しいので、中学のうちにこの技能を求められることはない。まぁ、凪原と天掛はその辺の技能をきっちり習得しているがな。戌亥家からの報告によると、千宮は既にマスターしたとあるが、どうだ?」
「抜かりなく報告通りですわ、トラヴィス様」
「担任教師に様付けは感心しないな。先生と呼べ」
「……かしこまりました、トラヴィス先生」
あざねは笑顔を崩さず優雅に礼をした。このクラスで唯一、ルーシャ先生以上に髪色が鋼色に染まっている彼女は、メイドの奉仕精神を魔女としての技術にも注ぎ込んでいるようである。それにしても戌亥家……とエデンは黙考する。個人で製鉄師と魔女としての訓練を積めるほど高度な教育を施すということは、前から金持ちの家とは思っていたが想像以上に凄い家柄なのかもしれない。
そんなに凄い家で、戌亥。一つ、思い浮かぶ家がある。
しかしそれを確認するのは、本当だった際に余りにも――と思い、心の奥に押し込む。
= =
記録復元、開始。時系列、固定時間軸「和光37年4月」より79日と8時間前。
座標、 鉄結管理局本部。記録内容、会話。
「――療養に?」
「はい、間違いありません。この日、この時間、確
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