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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
皐月の雹2
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かな砂煙を巻き上げ、天馬の姿が消えた。

「えっ――」
「一体どこに?」

 エデンと永海、古芥子姉妹が状況についてゆけず困惑する中、悟、八代夜、そしてエイジの三人は正確に状況を把握していた。

「後ろだな」
「皆さん反応が遅いですわよ」
「……かぁー、俺の渾身の速度での一発芸なのに、三人も気付くなんてどーなってんだこのクラス……」
「え、あれ!?さっきまで朧ちゃんの後ろにいたのに!?」

 エデンが慌てて振り返ると、そこには困ったように頭を掻く天馬の姿があった。
 永海が目を輝かせてはしゃぐ。

「分かった、テレポートだ!すっげー!ザ・超能力じゃん!!」
「いや、違うぞ」
「なんだ違げーのか。チッ」
「なにその感じ悪い態度!?まぁいいけどさ……」

 と、後ろにいた朧が天馬の隣に移動しながら説明する。

「この朧が内包し天馬に与えし力は単純明快。リック先生の申す『肉体強化型』に分類される力にございますれば。今のは足に全強化を注いだことで目にも止まらぬ速度を以て皆々方の背後に回っただけの、つたない芸であります」
「ははは、まぁそういうことだ。俺の力は筋力や体力を強化するんだが、力の配分を変えればさっきみたいな速度が出せたりもする。流石にあの速度での戦闘は無理だが、早く動けるってのはそれだけでアドバンテージがでかいからな」

 からからと快活に笑う天馬だが、もしあの速度で蹴りの一発でも叩き込まれれば常人は一たまりもない。一体どれだけ訓練すればあんな速度で動けるというのだろう。

 これが、鉄脈術。戦場を一変させ、かつてラバルナ帝国を世界の頂点へ押し上げた力の欠片。
 半数ほど生徒がざわめくなか、リック先生が再び説明に加わる。

「『肉体強化型』の術はOI能力の中じゃありふれた類だが、単純に強くて速いってのは白兵戦での戦闘能力に直結する。普通じゃ持ち上げられないものを持ちあげ、普通じゃ出ない速度で走る。最も基本的な現実の拡張だからこそ、逆に対策しづらいのが『肉体強化型』の強みだ」
「ま、永居にはバッチリ捕捉されてたみたいだが。情報系の鉄脈術か?」
「ああ、俺はヒマさえあれば鉄脈術を使って情報収集してるんでな。授業が始まる前からずっと発動させてるんだよ」
「さらっととんでもないこと言いやがるコイツ……で、戌亥と氷室は何で分かった?」
「わたくし、鉄脈術なしでも音とにおいには敏感でしてよ?」
「天馬くんが移動したのを見てたから」
「やべぇ、後者の言ってることが全然わかんねぇ。生身の肉眼では絶対に追えない速度で移動してる筈なんだけどなー……動体視力バケモノかよ」

 どんどん天馬のテンションが低下していき、朧が目じりを抑えて呆れたような顔をした。最初の頃も思っていたが天馬は意外と目立ちたがり屋
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