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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
皐月の雹
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アと古芥子ペアは特によく聞くように」
「「「「はい!」」」」
「とはいえ、授業で一度は説明したからおさらいになるがな」

 改めて、リック先生が説明する。

「お前らがこれから装備する魔鉄器は、魔鉄加工によって生み出された契約魔鉄器だ。契約魔鉄器は一般に広まっている便利素材の魔鉄器と違って、製鉄師と魔女の力を繋げ、引き出すために魔鉄加工技師が特別な性質を付与している。形状は様々、使い方も様々だ」

 一般に魔鉄器というと、便利グッズから建築素材まで幅広い分野に浸透している。魔鉄器の原材料たる魔鉄は、その名の通り魔法のような性質――物理法則を無視して現実を局所的に改変する機能を付与することが出来るのだ。この加工技術が開発されたとき、世界は産業革命を超える衝撃を受けた。それまで魔鉄は「加工不能の謎の物質」という厄介者の扱いを受けていたのに、蓋を開ければ願いを叶える夢の物質だったのだ。
 ――尤も、この場にいる生徒の全員が、生まれたときにはすでに生活に魔鉄が普及していたので、その驚愕に共感するのは難しいだろう。

 加工可能なのが魔鉄加工技師しかいない関係でお高いものが多いが、電気のいらない永久ライトだったり錆びも欠けもない農具だったり、病院の壁を直したりとなんでもござれだ。今や日本の主要な建築物の基礎にはほぼ例外なく魔鉄素材が組み込まれている。敢えて欠点を挙げるなら、決して安くはないことくらいだ。

 しかし、契約魔鉄器はそれらと魔鉄利用方法が根底から異なる。
 鉄脈術の使用を前提としている上に、大半が戦闘を意識して製造されている。言うなれば侍にとっての刀。その強度も値段も制作にかかる手間も、一般の便利グッズとは比べ物にならない。なぜならばそれは、万一戦いになった際に命を預けるものなのだから。

「製鉄師によっては複数持っていることもあるが、今は一つの魔鉄器を使いこなすことだけ考えればいい。普通に生きていくには一つあれば十分だしな」

 そう言いながら、リック先生が二つのアタッシュケースを取り出す。それぞれには製鉄師である氷室叡治、そして古芥子美音の名が書かれている。先生はそのケースを鍵で開けた。

「氷室・暁ペア、古芥子ペアに渡されるものは本格的な職人じゃなくて魔鉄科の生徒が教師の指導の下に制作したものだ。実用には問題ないしあらかじめ確認した要望には応えているが、恐らくはまだ洗練されていない。不満や問題があれば、この訓練を元に作った生徒と話し合って改良していけ。魔鉄科生徒にとっての実践訓練でもあるからな……さあ、装備しろ」

 エイジは言われるがままにアタッシュケースに近づき、中にあったものを取り出す。
 それは、とても戦うためのものには見えないコート、そして雪国用のようなブーツだった。ただしその縁には魔鉄の装飾が
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