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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
春の霜4
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 みな、随分と学校に慣れてきた。
 しかし、まだ三年部普通科特組には一つだけ大きな「未経験」が残っていた。
次の月曜日から始まる、鉄脈学実践訓練――契約魔鉄器を用いた、異能の発動である。

「……あの時以来、かぁ」

 エイジよりその身に宿したあの氷と雪の城を強くイメージしながら、エデンは思う。

 あの城は、結局何だったのだろう。と。
 病院を城と思ったというのなら、まだ分かる。しかしエデンはあの城の中を彷徨ったが、病院との共通項など何一つなかった。いやそもそも、『歪む世界』のイメージとは能動的に動き回れるものなのだろうか。

 うすぼんやりとした疑問はしかし、それ以上考えられることもなく思考の片隅に追いやられた。



 = =



 記録復元、開始。時系列、固定時間軸「和光37年4月」より171日と8時間前。

 座標、関係者以外立ち入り禁止区画――氷室家廃墟。記録内容、会話。



「ド真ん中から盛大に抉れたせいか、家の隅は結構無事で済んでるな」

「ええ、なんであるものは片っ端から鑑識に回します。現在はこの家の内部の三次元データを取り込んでおり、犯人の遺留物の可能性があるものなどの捜索も並行して。データ取りが済んだら、今度は氷室家そのものを調べていく予定です」

「ああ、頼む。まったく、立派な家だったろうにハデにぶっ壊しちまって………にしても」

「なんです?」

「氷室家ってのは羽振りが良かったのかねぇ。家のあちこちに高い時計がぶら下がってら」

「……言われてみれば、そうですね。一つの家に置くにしては妙に多い。しかもどれもそれなりに値が張りそうだ。でも時計以外は一般的な家庭の品ばかり……?」

「時間に煩い家だったわけだ。流石にこいつは事件とはあまり関係なさそうだな」



 記録復元、終了。情報を記録しました。

 次の情報復元を開始します。復元完了まで、あと――。
 
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