春の霜3
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ミミカチューシャをつけた少女は冷酷な態度できっぱりと握手を断った。
あんなファンシーであざとい格好をしているのに男を拒絶するとは、予想以上にとっつき辛いな、とエデンは内心で冷や汗を流した。少女はそのまま立ち上がって教室を見渡した。
「自己紹介の途中失礼、余計な手間を省くために先に名乗らせていただきます。私は戌亥八千夜。共にいるこちらのメイド服の女子は私の専属メイドである千宮あざねです」
「ご紹介に与りました、千宮あざねでございます。お嬢様の専属メイドとして、また皆様の学友として、不肖の身ながらお勤めを果たしたく存じます」
栗色の髪を揺らして優雅に一礼する八千夜と、それに合わせて深く一礼するあざね。あざねの髪は深い銀色に染まり切っており、既に魔女としては完成しているようだ。その物言いや態度、メイドを連れているという事は、かなりいい家柄の人間なのかもしれない、とエデンは思う。
「あざねは私の専属メイドであると同時に魔女契約も結んでいます。妙な色目を使ったり私を差し置いて仕事を押し付ける事は許しません。それと――私には『キライな臭い』があります。特に男の臭いは近づかれると不快です。失礼ながらリック先生も、私には触らず、なるだけ近づかないようお願いします」
「――補足させていただくと、お嬢様は『におい』に非常に鋭敏であられます。それゆえお嬢様のカチューシャは魔鉄器であり、これによってある程度お嬢様は不快な臭いを『希釈して』おられます。故にこの教室に男子生徒がいても基本的には問題ありません。しかし、これは不快な臭いを排除しているのではなく、希釈して気にならない程度に薄めているだけですので、半径1メートル以内にまで近づかれると希釈が対応しきれません。お手数ですが、お嬢様の『お願い』にご留意をお願いします」
OI能力の性質に関わらず、彼女は異常なまでの嗅覚過敏である、という事なのだろうか。まさかあのファンシーな飾りにそんな意味があったとは、担任の先生方と黒縁眼鏡少年とエイジ以外の全員が意外そうな表情を浮かべる。
しばしの沈黙ののち、リック先生が口を開く。
「基本は副担任に対応してもらうが、非常時に際しては悪いが我慢してもらう。いいな?」
「……承知しました」
僅かな間はあったが、八千夜は頷き、周囲を見回す。
「先程の凪原さま、先程は無礼を申し訳なく。しかし、以降お気を付けください。あと黒縁の眼鏡のお方もそのようにご理解を。二人のパートナーの魔女様は、臭いが強く付着しているようならば失礼ながら消臭させていただきます。後はそこのコートの――あら?」
目線がエイジに移った所で、八代夜は首を傾げ、エイジの下に近づく。
「……?」
戸惑うエイジを他所に八代夜は彼に顔
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