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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
春の霜2
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まさに優しいお姉さんといったニコニコ顔の魔女だった。髪の色は青みがかったグラデーションの銀髪で、魔女にしては身長が高い方の150p程度。年齢は不明だが、苗字が一緒で同じクラスの担任なら関係性は容易に想像がつく。ただ……彼女は椅子ではないものに座っている。それがさっきから気になる。何なのだろう、あの『棺桶ほどある金属の塊』は。

「この仕事をする理由は俺が教師であるという単純なものが半分。もう半分は――お前らが能力を暴走させても俺なら鎮圧出来るという判断があるからだ。他のクラスもそうだが、ここは特にな。力のコントロールを誤って暴走したら俺が叩きのめして鎮める。増長して喧嘩して回るような奴は俺が叩きのめして叱る。そして優等生は訓練で叩きのめす」
「叩きのめしたいだけじゃねーか!!」
「そしてリックのやり方でダメならこの私の出番ってワケ。遠慮なく相談してね?」
「典型的な飴と鞭!?さっそく相談だが叩きのめすの止めろよッ!!」
「冗談だ。言葉は尽くす。ダメならコイツを使うというだけだ」

 そう言ってリック先生はルーシャ先生の乗っている鉄の塊――その端にある厳めしいグリップを掴んで先生ごと持ち上げた。

 それは、とてもではないが武器とは呼べないし鈍器として使用することが前提とは思えないのに、それで殴られると思うと死の一文字が脳裏をよぎる、まごう事なき『長方形の鉄の塊』。
 無駄に正確な寸法でつくられているのと、彫りやグリップの構造が無駄に近未来的なデザインをしているのに、使用方法が限りなく原始的であるのがなんとなく腹立たしい。
 リック先生は、それを顔色も変えず鉄脈術も使わず、片手で軽々と持ち上げていた。上に座っていたルーシャ先生はその鉄の塊の上をするっと滑り、そのままリック先生の肩に肩車の体勢で座った。やけに動きがこなれているので日常的に座っているのだろう。

「それ魔鉄器かよ!?重量いくつだ!?」
「心配するな。魔鉄加工のあれこれで100キロしかない。しかも表面金属は光沢があるけど特殊素材を使ってるから柔らかいぞ。エレベーターに乗せられなくてちと不便だがな」
「ひんやりしてて座り心地がいいんだよねー。特に夏はねー」
「ねー。じゃねえ!!表面柔らかくても100キロの鉄の塊でぶん殴られりゃ質量で死ぬわっ!!」

 眼鏡くんのツッコミが止まらない。トラヴィス先生方のツッコミどころも止まらない。あれは本気なのか冗談なのか、リック先生の顔が常に無表情なせいで全く分からない。ルーシャ先生もニコニコ笑うばかりで段々その笑顔が不気味に思えてくる。

 とりあえず、無駄に騒いだり逆らうのは止めておこう。
 暴力よりも得体その知れないモノに対する恐怖心から、クラスはほぼ団結した。

「痛い目に逢いたくないならやることは簡単だ。俺たち
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