春の霜
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を感じる無機質な顔。時々彼はこんな顔をする。きっかけはいつも、本人も気付いていない。電車やタクシーではいつも飽きずに外の景色を眺めているのにモノレールでこうなるのは、どうしてなのだろう。他にもこんな風になる事が何度かあったが、原因はいつも曖昧で絞り込めなかった。
手を横に伸ばし、エイジの掌をそっと包むように握る。エイジはそれを一瞬強く、そして壊れ物を触るように優しく握り直した。こうしていないと、エイジの心がどこか遠ざかってしまう気がする。
「……あったかい」
「そうでしょう。私はあったかい女なの」
バカみたいな会話だ、と自分で思った。こんな会話、もう100回はしたことがある気がする。
一緒に乗る生徒からは「そういう関係」にでも見えるのか生暖かい視線を注がれていたが、苦には思わない。エデンは、もしかしたら自分はとんでもないブラコンの類なのかもしれない、と思い、それがどうしてかおかしくてくすりと笑った。
= =
記録復元、開始。時系列、現代より150日と4時間前。
座標、鉄結管理局本部。記録内容、会話。
「モノレールの切符ぅ?何でまたそんなもんが?」
「現場に残ったものの一つ、氷室くんのものと思しきリュックサックの中から出てきました。日付がですね、丁度1年前くらいになってます。他にも切符とかパンフとか入ってまして、色々調べてみたところ……どうやら氷室家は1年前に氷野視櫓山へ旅行に行ったらしいですね」
「氷野視櫓山ぁ?……確か10年くらい前、戦国時代ブームで城の跡があるって注目されて町興ししてた氷野視村の上にある?」
「はい、その氷野視村の上にある」
「ん?待てよ、1年前であの山と言えば、『アレ』が起きた――?」
「やっぱりそれ気になっちゃいますか。俺もこいつは、と思いました」
「……県警に手ぇ回して記録漁るぞ。もし『関わってる』んだとしたら、手掛かりになる。今は一つでも情報が欲しい」
「了解しました。他にもいろいろ情報が上がって来てますんで、ファイルチェックしといてくださいね」
記録復元、終了。情報を記録しました。
次の情報復元を開始します。復元完了まで、あと――。
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