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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
春の霜
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 結局、中学でこの変人にまともな友達はあまり出来なかった。口下手、天然、女の子の傍にいると男からは取っつきづらく、女子は子供っぽさが賛否両論。なまじ成績が凄まじいのが悪目立ちしたか、逆に目を離すとタチの悪いのに絡まれる始末だった。
 しかも、私が絡まれると今度は全力で守ろうと抵抗するのだから――放っておけないのだ。

「とにかく、行くよ!入学式は9時からだから、あんまし時間ないの!」
「うん」

 ―― 十数分後、校長の厳めしくも含蓄のあるお話に乗ってきた睡魔に敗北して爆睡するエデンと、そのエデンが倒れてしまわないかハラハラしているエイジは、ものの見事に入学式を全く印象に残らないイベントとしてしまった。

 エデンは遠足の前日にわくわくしすぎて、翌日は眠くなってしまうタイプだった。




 ところで、聖観学園に限らず、聖学校はどこも中高一貫であることもあってか生徒数5000人を軽く超えるマンモス校だ。製鉄師の育成を行うために求められる敷地の広さはその辺の大学をも凌ぎ、聖学園の周辺はもれなく学園都市。中学の時点で細かな学部が存在し、同じ学校の人間でも6年間一切すれ違わず卒業するなんてことも珍しくないそうだ。

 そこに中途入学するに当たり、一つ大きな問題が発生する。

 それが、製鉄師及び魔女の「鉄脈学」だ。

 この教育は一般学校では触り程度しか行っていないが、聖学校はその鉄脈術を将来使う使わないに限らず、一定以上使いこなせるようにしなければならないとしている。それは自衛のためであり、能力の暴走を抑える為でもある。特にペアを組んでいる場合はこの学問を修めるのは必須であり、学習過程で「鉄脈術取扱免許3級」を習得できなければ留年決定だという。

 そう、一年時からコツコツ実技と勉強をしてきた生徒と違い、中途入学した人間は必然的にこの「鉄脈学」の修了過程を通常の2,3倍の速度で終えなければならない。そのため、中途入学する人間は通常の学部とは違う「特組」と呼ばれるクラスに割り振られる。エデンとエイジは二人とも通常学部――普通科のようなものだ――の特組に送られており、通常クラスのある建物から大分離れた場所に向かっていた。

「いやー、それにしても学校内の移動がモノレールとは……わたしモノレール乗るの初めてだよ」

 学校内にステーションとモノレール。そんなものでもないと行き来が不便なのか、それとも魔鉄による技術革新を見せつけたいのか、敷地内モノレールは快速で目的地へと向かう。不気味なほどに静音だ。

「僕は、乗ったことがある気がする。何でだろう」
「消えた記憶の中で乗ったんでしょ?」
「うん。……そうかな」

 外を見つめながらぼそぼそと喋るエイジは、少し元気がなかった。
 どこか虚無感のようなもの
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