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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
夏の雪解け3
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天孫や軍の力を先細りさせることが出来る。そしてどの道を往ってもOI能力者はボールのように人権を弄ばれる。だから天孫が直接介入してこれを守っている。
 そもそもOI能力者の学校である聖学校も、全て先代天孫の息がかかっている。
 軍国主義や政治の汚い手を払いのける加護であり、皇国が最も愚かな選択をしないためのストッパーとなっているのだ。つまるところ、一定以上のOI能力を有する人間の人権は確かに保障されているが、その分変更等をする際に多くの時間と手続きが必要になってしまうということだ。

 ……ともかく、そのような理由で、九州にある聖学校『聖観学園』へ通うのは早くとも来年度と見られている。それまでに、エイジの世間知らずを直せればいいのだけれど。


 話が逸れた。学校だ。
 エイジは驚くほど勉強が出来る。一度聞いた話は全て覚えているのではないかと思う程で、数学の問題などは時々先生の予想を超える新回答を弾き出している程だ。最初は国語なんかが苦手だったのだが、僅か1週間もすると苦手分野はなくなっていた。

 問題は、その慣れるまでの1週間だ。記憶喪失のせいなのか、エイジは何をするにもとにかくぎこちなかった。初めての日にシャンプーの泡が目に入って慌てたり、お箸の使い方が分からず手でご飯を食べようとしたり、足の欠けた虫を見つけて病院に「治せませんか」なんて困ったことを言っていたこともあった。その奔放さと常識に縛られない思考は子供のようだ。

 半面、一度教えられると加速度的に学習していく極めて理知的な部分もエイジにはあった。いつも少しぽけっとしていて会話が苦手なようだが、一度した間違いを二度としない。先生も最初はアスペルガー症候群なる学習障害を疑ったようだが、その後の行動で「記憶喪失の影響だろう」と結論付け、今ではクラスに受け入れられている。

 そんなエイジだが、とにかく時間があると私のそばにいたがる。もっと男の子たちと話なさいというが、あまり話についていけていないのも理由だろう。それに、なんというか……契約を交わしたせいなのかもしれないが、エイジと二人でいる時に会話がなくても苦に思わない自分もいるので、あまり強くは言わないでいる。

「考えてみれば、いちばん付き合い長いのは今の記憶の中じゃ私や母さんたちなんだよね、エイジは」
「うん。でも一緒にいるのは、それだけが理由じゃないよ」
「なになに?パートナーだから?家族だから?それとも……」
「僕の凍えをエデンは受け止めてくれたから。救われたから、だから僕はエデンを助けようと決めた。助けるには、一緒にいた方がいいから」
「……ふ、ふーん。でもそれは一人でいていい理由にはなんないんだからね?……あーもう、しゃーないなぁ。一緒に誰かと話しに行こう?」
「うん……」

 こうして会話
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