夏の雪解け2
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目が覚めれば、少し肌寒い場所。
白い毛布、シーツ、壁。天上からは白いLEDの光が降り注ぐ。
気が付けば、あの吹雪のような白さや雪、氷は視界から排除されていた。そこにあるのは当たり前の空間、当たり前の文化性で構築された部屋。危険性を感じない、覚えがない空間だった。
今はいつだろう。部屋の端にぶら下がったカレンダーが8月を示しているのを見て、夏だと思う。そこまでいって、やっと叡治は自分が既に何度か覚醒し、人と会って話をした事を思い出した。
目が覚めてからこの方、自分が知っている人間を見ない。それもそうだろう。どうやら覚えていないらしい。親のことも、友達の事も、ご近所のことも、何もかも。うすぼんやりとした知識がある気がするが、それを意味のある情報として出すことが出来ず、結局自分でも自分が何も覚えていないのだと自覚させられた。
だから、両親が来ないことに不安感を感じないし、自分がこれからどうなるのかという事が当然考え売るべきことだと思っても、関心が多く湧くことはなかった。
だが、数分の間まどろんでいるうちに、何人かの人が入ってきた。
先頭を歩くのは光沢のあるベージュ色の髪の少女だった。金属特有のメタリックな色合いをみて、知識を引き摺り出す。魔女と呼ばれる人種だ。興奮していて、後ろから同じく魔女と思われる女性ともう一人の男性の呼び止めようとする手を振り払って、一直線にこちらに来た。
女性はふんす、と鼻息荒く目の前にやってきて、じろじろと叡治の顔を見て、うん、と満足げに頷いた。
「今日から貴方はうち、暁家が面倒を見ます。ご両親が見つかるか、もしくは貴方が独立するまでです。いいですね?」
「だから先輩!!まだ手続きとか色々ありますから!!」
「ごめんね、この人強引過ぎて途中から色々と過程を飛ばしちゃうから!!」
どうやら、目の前の少女は年を重ねた少女らしい。この人に面倒をみられるのか、と他人事のように思う。不意に、その顔がどこか見覚えがある気がした。目を覚ましてから初めての既視感。その正体を探るより早く、病室に二人の人間が入ってくる。そのうちの一人を見て、叡治は既視感の正体に気付く。
そう、あの少女は――暁エデン。
彼女は目の前の年を重ねた少女の子供か、親族なのだろう。
エデンはこちらを見るなり速足に叡治の前にやってきた。この少女が自らの凍えを内包することで、自分を永劫に続くような責め苦をから解放してくれたのか、と思う。叡治はここで初めて、自分が明瞭な意識を以て言葉を発するのを自覚した。
「大丈夫?」
「こっちの台詞なんですけど」
それは、自分を苦しめた「あの世界」を内包した彼女が寒くないのか、という思いによるものだった。知識としてそんな事で魔女が苦しむ訳がな
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