夏の雪解け
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状況を理解するほど理知的な反応は見せるのですが、感情が伴っていないというか……自意識が希薄になっているように見受けられます」
「我々としても困っていまして……大至急彼に親権をとも思うのですが、深度3という彼の才覚が話を拗らせて……」
「ちっ、皇国軍の連中がOB含めて雁首揃えて待ってるって訳?」
舌打ち混じりの母の確認に松谷が頷く。
つまり、軍部としては氷室叡治くんの並外れた才能を軍で発揮させたいのだろう。だからあの手この手で養子縁組の候補を次々に擁立してくる。通常ならば親なき子に保護者が現れるのは喜ばしい事だが、はなから才能目当てで集まってきているのだと思うと流石に不快感しか感じない。
しかも、今の彼は記憶もあいまいで自意識が希薄。言葉通りなら、乗せられるがままに軍人の道を歩みかねない。それはある意味では成功を約束された道なのかもしれないが、当然それにはエデンも巻き込まれるし、何より彼の意志が介在していない。
「最悪、俺とコイツで引き取るって話も出てます」
「子育てとかしたことないけど、このまんまってのはあんまりにも……」
「あれ、お二人って一緒に住んでるんですか?」
「ウチは結婚してるけど夫婦別姓なの、エデンちゃん。ほら、これ」
道明寺が左手の小指を見せる。魔鉄証、兼、婚約指輪なのだろう。松谷さんも少し恥ずかしそうに左手を上げると、ペアリングになっていることが理解できた。シンプルながらはめ込まれた小さな宝石が輝いている。うちの両親のは仕事柄かなりシンプルなデザインなので、ちょっと見惚れた。
しかし、そこに待ったをかける人物が一人。
「はぁー?子育てしたことがないペーペー共に子供預ける馬鹿がどこにいんのよ!?しかも中学生の時期の多感なときに!!もういい、ウンザリ!!両親が見つかるまで私が親権を預かります!!」
「――ええっ!?そりゃ俺らとしては助かりますけど……センパイの家ってエデンちゃんも含めてお子さん3人いるんじゃ!?」
そう、そうである。実は我が家は両親含め5人家族なのである。ちなみにエデンは末っ子である。もう一人なんて面倒見る余裕があるのだろうか。エデンの私見ではもうすぐ自立する兄を度外視しても割といっぱいいっぱいだと思う。父も同じ意見なのか目を剥いているが、その様子は「無理だろ!」ではなく「こいつ本気だ!」というニュアンスが含まれている。
「はい決定ー!暁家では母の決定が至上命令ですので決定ー!もう私の目が黒いうちは利権だ何だと子供の大切さが分からない連中に叡治くんを一切合切近寄らせないんだからね!」
「おい、エリ!駄目だと思うが一応言うぞ、そんな場の勢いで決めていいのか!?」
「アンタこそっ!!あの男の子が今後私たちの知らない所でどこぞの馬の骨とも知れない才能至上主義者のクソ野
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