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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
夏の雪解け
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ろう。
 私は一度やってしまったことだから、後はなるようになれと思っている。多少自由が制限される事もあるかもしれないが、別に結婚しろとか一緒に軍に入れなんて話にはなっていないのだし。

 父と母は家では優しい両親だが、ひとたび仕事に出ると軍の鬼教官だったりする。若いころから結構な実戦に参加していたらしく、故に世界に於いて大国の庇護を得られ難い日本皇国の未来を憂いて厳しくしていると言っていた。しかし、実際のところは内地で安定して暮らせる環境で子供を育てたいがために出世したんだとは父方のじいちゃんの言である。
 つまり、まぁまぁの親馬鹿なのだ、この人たちは。

 病室の外で案内をしていた役人――OI体質者の調査登録及び管理を一括して行っている鉄結管理局(ウェルディング)の人らしい――の案内で辿り着いたのは、採掘がおこなわれた部屋の横。ここも損害を受けた筈だが、隣の部屋も含めて綺麗に破壊の跡が消えている。
 多分、魔鉄加工技師の開発した「形状再現魔鉄材」を使ったのだろう、と後で父が教えてくれた。使用者の記憶を読み取って組成や形状を変化させ、欠損した部分や変形した部分を元に戻す素材なんだそうだ。ちなみに便利なものには代償が伴うもので、かなり高位の魔鉄加工師でないと作れない故に市場に出回る量が圧倒的に少ない最高級素材だという。金持ってるなぁ、鉄結管理局――などと俗な事を思った。

 辿り着いた部屋には大きな机と椅子が三つ、奥には役人らしき人と、その横に魔女と思しき人がちょこんと座っている。髪の色はかなり鉄の色彩に近い銀。魔女の髪は銀に近い程に魔女として完成しているそうなので、実年齢は母と同じぐらいいってるかもしれない。ただ、魔女の方は書記か秘書みたいな役割なのか、少し脇で書類を用意している。
 二人を見た笑重花は開口一番、嫌味っぽい言い方で二人をなじった。

「出世したわね松谷。あと道明寺も。あんたら鉄結管理局の不手際で娘に前科つきかけた落とし前つけてくれるのよねぇ、この税金泥棒共」
「勘弁してくださいよ暁センパイ……その件は散々謝ったし賠償金の話も承諾したじゃないですか。俺らだってプライベート保護やら火消しで二徹なんすよ?センパイに叩かっれなくても上から下から小突かれ回されて騒ぎが収まらないっていうのに、そういう意地の悪いのはマジで勘弁してください」

 松谷と呼ばれた役人は顔が引きつっており、道明寺と呼ばれた魔女も必死に存在感を消して母に責められぬよう縮こまっている。つまり、同じ学校の先輩後輩という訳なのだろう。気の強い母なので、若かりし日には相当やんちゃをしていたに違いない。父の殿十郎(でんじゅうろう)がどうどう、と鎮めると、母は面白くなさそうに椅子にどっかり座った。父も座り、私も座る。

「……ん、オホン。さて、今回呼んだのは
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