暁 〜小説投稿サイト〜
【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
凍てついた夏3
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
たし」
「ありゃ要指導だな。コントロール覚えてくれないと危なっかしい。ったく、軍部のうるさいの黙らせて少年少女の人権守るのも一苦労になりそうだ」

 彼らは内閣の組織の一つ、OI体質者の調査登録及び管理を一括して行っている部署の人間だ。故に今回の事故――氷室(ひむろ)叡治(えいじ)と暁エデンが採掘によって引き起こした「余波」の事後処理にも少なからず彼らの労力が消費されることとなる。
 それは、いい。彼らにとっては当然の業務であり、異論などない。
 ただ、一つだけ彼らにとって無視の出来ない大きな問題があった。

「暁ちゃんは問題ねぇ。あの夫妻も事情は先刻承知だろうしな。ただ、問題は氷室叡治の方だ……保護者、失踪したとよ」
「……え?両親が?それ、いつのことよ」
「分からんが、手前の息子が採掘終えて心配がなくなった頃には既にいる筈の自宅から忽然だ。しかも――氷室くん本人に記憶障害が確認された。両親のことを全く覚えていないらしい。彼だけじゃない。両親の親類や近所に至るまで、映像や記録は残っていても記憶が完全に消えてる」
「……鉄脈術による記憶操作」
「その線でほぼ確定だろうな。あ、これ警察から回ってきた写真」
「――明らかに製鉄師クラスの戦闘痕、よね?」

 回されたタブレット端末に映る光景――そこには、氷室と書かれた表札のある住宅の画像があった。ただしアスファルトの地面がめくれ上がり、斜め上に引き千切られたように無残に破壊された一軒家という凄惨な姿で。その他いくつか、通常の事件では見られないような奇妙な破壊痕が残っている。食い入るように見つめた少女は、はっとする。

「これ、襲撃されただけじゃない。『迎撃』してる。でないと、内からも外からも破壊されてることなんてない。氷室くんの両親って――」
「非OI体質だ。深度0ですらない。記録上は、な」
「じゃあ誰がこんな………確かに非合法製鉄師くらいいるけど、何故彼らを狙ったの?迎撃の痕があるってことは他の誰かを狙っていた?」
「ちなみに自宅には通帳だの財布だのといったものは丸ごと残ってたから強盗の線は薄い。監視カメラも洗ってるが、今のところ不審人物の報告は無し。ま、相手が非合法製鉄師なら何らかの隠匿もしくは映像の書き換えをされてる線は消えないがな。『味見屋』を呼んで明日から探るってよ」
「ああ、あの星詠みの。あたしアイツキライ。愛想悪いし」
「ぶーたれないの。あいつだって悪い奴じゃないんだし。それより……今回の件、長くなるぞ。外事と特霊局に話通すことになるかもしれん」

 ――子供たちの知り得ぬところで、大人の事情は静かに進行していた。
 
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ