凍てついた夏2
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
魔女は、時間に置き去りにされた迷い子だ。
皆と一緒に足並みを揃いて歩いていた筈なのに、ふと気が付けば前に進まなくなっている。
と、いうのはアンニュイな時の母から聞いた話である。
運がいいのか悪いのか受け継がれた素質によって私は永遠に大人の女になる権利を失ってしまった。
極めてありがたくないし、胸と身長の成長度合いもかなり絶望的らしい。
母曰く、この魔女の素質の有難みは30歳を過ぎたころからやっと自覚できるようになるんだそうだ。余りにも遅すぎる恩恵だと呆れた。大人になりたかった魔女の間では『ネバーランドの呪い』などと揶揄されるこれは、職業選択の自由なる大義を外見的要素によって大いに締め上げるものであった。
中学の同窓会に参加して曰く、周囲の皆が老けていて皆に「変わらないね」とか「羨ましい」とか言われるのはあまり気分のいいものじゃなかった、と母は不貞腐れていた。そもそもお酒を飲んだり買ったりするのに逐一「魔鉄証」――OI能力者の証明となるリングで、成人を迎えている者のそれは一部銀色だ――を出さなければならない母にとって外出はあまり楽しいものではない。ただのショッピングならまだしも、日常の買い物は特にお使いと勘違いされるのがうんざりなんだそうだ。
確かに、母と私が並んで買い物にいくと何も知らない人は一見して姉妹と勘違いすることが良くある。母もそうだが私もそう思われるのはあんまり好きじゃないので、外向けの用事は父がすることが多いし、授業参観に来てもらうのも父だ。両親が製鉄師と魔女であることは結構誇らしいと思ってもいるが、母親が可愛いだのなんだのと事情を知らない男に言い寄られている光景はかなり不快だ。
母は私の母で、父の妻。家族でもない奴にべたべた触って欲しくない。
さて、職業選択の自由が狭いとされる魔女なる人種は、外見年齢の成長が停止する永遠の少女であると同時に現代の戦場の主役たる『製鉄師』のバディという特別な素養を持つ生体兵器という側面もある。当人たちが断言しているのだから、私にそれを否定出来るはずもない。
ぶっちゃけ魔女として生まれると件のバディ、言ってしまえば軍属となることを日本という国はそれとなく勧めてくる。徴兵制で赤紙が来ない分だけマシと言えばマシだし、仕事内容を度外視すればかなり待遇もいい。収入は言わずもがな、様々な特権を有し、何より軍属魔女も軍属製鉄師も世間一般ではヒーローのようなものだ。名誉職ではなく本当に名誉な職と言える。私も正直、両親を見ていれば憧れの一つも抱く。
でも両親は私が軍属魔女を志すことを決して快い顔で見ていなかった。色々とその理由を想像することは出来るが、ともかく私は「ならやめとこう」と思った。憧れのある職は一つだけではない。差し当たっては歌手と
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ