§2 幽界にて
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んなんじゃ後輩の神殺し共に越されんぞ。俺との模擬稽古以外ここ数百年してねぇだろ」
普段だったらここで「うるさいなぁ」などといった文句が返ってくるのだが、今回はそうならなかった。
「んー、しょうがないなぁ。ちょっくら現世行ってくるわ。百年くらいしたら帰ってくるから」
「そうそ……へ?」
「あら?」
「……気のせいでしょうか。私の耳に間違いがなければ今マスターが現世に旅立つ、と聞こえたのですが?」
三人揃って意外そうな顔をする。自分の耳を疑うような表情。ここ数年脛齧りをしていた男が自ら発した外出宣言に呆然としてもしょうがない。
だいたい最後に出たのは実に一世紀以上昔なのだ。
「なによ、言い出しっぺは須佐之男だろ」
「こんなに簡単に行くと言うとは……」
「日本人に神殺しが居るんでしょ?会ってみようかな、と。エル、行くよ」
そう言って荷物をまとめる黎斗。彼は自身の持ち物手早くまとめる。
「ん、じゃね。また今度〜」
須佐之男が気を取り戻したのはしばらく後の話。
「……明日は嵐だぞおい」
家族がこの世界には存在しない。須佐之男に頼んで調べてもらった。彼の調査でないのならば、そうなのだろう。彼が現世へ来た目的の一つは携帯電話の購入である。千年の永きを経て彼の携帯電話は故障したが、内部のマイクロSDは無事だと信じたい。保存した情報の中には家族、友人の写真といくつかのメール。つまり元々平成の世になったら彼は現世へ帰還するつもりでいたのだ。
「ん、これでいいかな」
「周囲に人はいませんよ」
エルを隠すためのリュックを背負った黎斗は手頃な石を拾い権能を発動。石はダイヤモンドに変貌した。これを売り、資金源にする。
強欲の悪魔、マモンの権能。宝石、貴金属の類を作り出す。金銀だけでなくレアメタルまで生成してしまうその力は世界の経済をあっというまに破壊可能な最強ともいえる力。作り出されたものは貨幣と異なりどんな時代でも価値を持つ。彼に資金難の文字は存在しない。まぁ、あまり大っぴらにすると目立つため少しで十分だろう。
みゃー。みゃー。三毛猫が鳴く。飼い猫だろうか?毛並みが綺麗だ。
「宝石店、知ってる?」
みゃー。
「あ、マジ?ありがと。あとでキャットフード奢るよ」
みゃー。みゃー。
「御主人様が出張じゃご飯大変でしょ?気にすんなって。これから金持ちになる(予定)だからさ」
「……マスター。もうちょっと声を小さくした方が。端から見ると可哀想な人ですよ」
背中からボソッと呟くエルの声。
「……ん、そだね」
みゃー。
「あ、お願い」
さっきより声を下げ猫と話す。猫が歩き始め、彼は後
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