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戦国異伝供書
第三十話 九州攻めに向けてその四

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「しかしな」
「明はそのままで」
「あの国とも交易を行いじゃ」
「儲けますか」
「そうしていく、戦よりもじゃ」
「交易ですな」
「それじゃ、よいな」
「領地は南の島々と」
「北の蝦夷地じゃ」
 そちらに求めるというのだ。
「天下が落ち着けばな」
「わかり申した、それでは」
「その様にな」
 こうしたことも話してだった、信長は九州攻めの用意もしていっていた。だがそれでもその間にだった。
 信長はよく茶会を催した、そこで利休とも話したが利休は信長にある茶器を見せてそのうえで彼に話した。
「この茶器ですが」
「ふむ、よい茶器じゃな」
 信長はその茶器を見て利休に答えた。
「実にな」
「これを殿に献上したいですが」
「左様か」
「はい、受け取って頂けますか」
「わかった、ではこの茶器をな」
「どなたかにですか」
「褒美として与えることもあろう」
 そうしたこともというのだ。
「時にな、しかし茶の道が広まってじゃ」
「茶器もですな」
「非常にじゃ」
 まさにというのだ。
「価値が出たのう」
「今では一国に匹敵する価値も出てるな」
「はい、しかし」
「それでもじゃな」
「茶器が褒美となるのはいいですが」
 それこそ見事な絵や壺の様になっている、天下人として褒美をよくやる立場の信長としては限りのある領地よりも遥かに有り難いものだ。
 だがそれでもとだ、利休は信長に茶の道をはじめた者として言うのだ。
「あまり茶器にこだわる様になり」
「肝心の茶の道がおろそかになるとな」
「それでは本末転倒で」
「まさにそうじゃな」
「それは戒めておくべきかと」
「わかった、ではな」
 それではとだ、信長は利休が淹れた茶を飲みつつ述べた。
「そのことはな」
「殿もですな」
「皆に言うておく、茶器は大事にしてもな」
 これがなくては何も出来ないからだ、茶のことは。
「しかしな」
「それもですな」
「茶の道がおろそかになってはならに」
「殿もそうお考えだからこそ」
「それは戒める、あとわしは確かに茶器をよく褒美にしておるが」
「その他のものもですな」
「書等もな」
「書もですな」
「書は写せる」
 印刷、それが出来るというのだ。
「だからな」
「それで書を作って」
「家臣達に与えておるが」
「それもよいことですな」
「そうじゃ、褒美としてもよいし」
「学問にもなるので」
「よいわ、この前猿にやったら」
 羽柴にとだ、信長は笑って話した。
「困った顔をしておったわ」
「羽柴殿は」
「そうじゃ、あの者は字があまり読めぬな」
 百姓の倅で若き頃から学問には疎かった、その為字を読むこともあまり得意ではないのだ。その為書を貰ってもなのだ。
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