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人理を守れ、エミヤさん!
第三特異点『四海終局決戦アルケイデス』
アバンタイトルだね士郎くん!
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!」
「コレが神である事を考えなければ、貴様の行いは尊いものなのだろう。だが、コレへ尽くす行いや想いは醜悪だ。ああ、最低限幼子の駄々に付き合ってやっただけ、有り難く思え」

 傲慢な物言いだった。神と神に連なる全てを、蛇蝎の如く憎み抜く満身の憎悪であった。

 彼の名はヘラクレス――ギリシャ最大にして最強。真の意味で並ぶ者などいない、強大なる雄。第三の特異点に現れた伝説のアルゴー号に、最も適性の高い弓兵の座で招かれた大英雄。
 されどその偉大なる魂魄は魔神の奸計によって反転した。この特異点の聖杯を握るモノが、或る細工を施したが為に、最大の英雄は最悪の化身へと変生したのだ。

 故に此処にいるのは高潔な英雄ヘラクレスではない。

 勇猛無比なるヘラクレスではないのだ。神性が抜け落ちたが故に身長は人の規格へ。筋骨のこそげ落ちた、長身痩躯の怨念の者は、その真名をヘラクレスの影法師――あらゆる恩讐を遂げんとする『復讐者アルケイデス』である。
 卑劣なる外道にも平然と手を染め、神々への復讐を成すためならば、如何なる辱しめも実行する下劣畜生。復讐のためならば、人理の存亡など彼の知った事ではない。人理が滅びればあらゆる神性も滅亡するとあれば――どうして躊躇う物がある。立ちはだかるのなら、例え何者であっても容赦はしない。それが――あらゆる理を捩じ伏せる、人理最強に等しい大英雄の成れの果て。
 故に強敵としのぎを削る、等という無駄を犯す蛮勇は、彼には有り得なかった。

「返せと言ったか。いいだろう、離すなよ」
「ッ?」

 斧が通じないと狂戦士の枠の内に在っても漸く悟ったのか、双斧を棄てて掴み掛かって来る雷光の英雄の眼前へと女神を掲げる。
 ぴたりと、放たれていた拳砲が止まる。あわや護るべき存在の頭部を粉砕しかけたのが、寸前で止まった。止まるはずのない拳?が。小柄な女神エウリュアレをアルケイデスが頸を掴んで宙吊りにしたまま前方に掲げた故に、咄嗟に全力で止まったのである。
 そして、やんわりと放り渡される。エウリュアレは非力にして貧弱、些細な事で怪我をする。故に雷光(アステリオス)は、その優しさゆえに抱き止めて。苦しげに咳き込む女神に意識を向けてしまう。えうりゅあれ、と。

「……憐れだな」

 隙だらけのその体に、魔大剣の切っ先が滑り込む。皮を裂き、肉を絶ち、肋骨の隙間を通った刃は怪物の心臓を確実に破壊していた。
 霊核を破壊した。しかし、ヘラクレスは怪物狩りの英雄である。抜かりなく、するりと心臓から刃を抜き放つや、返す刃で首を刎ね飛ばした。

「アステリ、オス……!?」

 甲高い女神の悲鳴が上がる。

 自身を抱き止めた優しい怪物の首から、鮮血が噴水のように噴き出し、その血が女神の全身に降り掛かったのだ。
 
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