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彼願白書
at sweet day
イフ、ガールズオブズデイ、ブラウンシュガー
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なぁ。」

そう言ってまた一撮みして、遠い目をしながらチョコを食べている壬生森を見て、はっと気付く。
この男は生涯独身の甲斐性無し、一人やもめのように振る舞っているが、箱を持っている左手、その薬指には、珊瑚珠をあしらった指環が常にある。
そもそも、この指環のもうひとつ、普段はスーツの内ポケットにしまっている片割れの指環には本来の持ち主がいた。
その本来の持ち主と面識がないため、浜風達はついつい忘れがちだが、この男は一度、一人の艦娘とケッコンカッコカリまではしているのだ。
むしろそれが因縁となって、この基地を作ったようなもの。
そのことをすっかり失念していた。

「すみませんでした。」

「ん、何がだね?」

「嫌なこと、思い出させました。」

「ん?あぁ、そういうことか。君が気に病むことじゃないよ。」

浜風はまたしても地雷を踏み抜いたのに気付いた。
一度考えてから、左手を見てからの、この反応はむしろ、浜風が謝ったせいで連鎖的に思い出したのだろう。
つまり、壬生森はただチョコを味わっていただけ。
浜風は気を回したあまりに、そこに余計なことを言ったのだ。

「あー、浜風。本当に気にしなくていい。彼女とはこんなことをする暇すらなかったから、思い返しようもないのだ。」

「あの、私は……し、失礼しました!」

浜風に出来ることは、勢いで頭を下げたあと、速やかに執務室を出ていくことだけだった。





「あら、浜風。こんなところでどうしたの?」

執務室の外に出て、廊下でへたりこんで壁に背中を預けて頭を抑えていた浜風は、話し掛けられてうわっと飛び上がる。
見慣れない、長くて黒い髪をした自分より少しだけ背の低い眼鏡を掛けた少女。
ベージュ色のフェルト生地のロングコートと赤いマフラーで、手には少し大きめでおしゃれな柄の紙袋。

「えっと、どちら様ですか?」

「声でわかんない?あたしよ。」

しょうがないと言わんばかりにヘッドギアの艤装だけ呼び出したところで浜風はようやく気付いた。

「叢雲?どうしたんですか?その格好。」

「本土にプライベートな買い物に行くのに、叢雲そのままの格好で行くわけにはいかないでしょ?」

洗えば落ちちゃうけどね、と語る叢雲の黒髪姿は、初めて見たはずなのにまるで違和感がない。
もともとそうであったかのような、そんな感覚さえする。

「本土に買い物、ですか?」

「そう、バレンタインデーに渡すものをね。」

どうやら叢雲は壬生森に渡すチョコを買ってきたらしい。
紙袋のロゴをよく見れば、島に籠りがちな浜風でも耳に覚えがある有名なショコラティエのものだ。
叢雲らしい、無駄のないチョイスだと思う。

「おみやげなら途中で会った不知火
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