SS24 苦難と幸多き未来と…
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違う。コイツは、そう定められただけのただの凡人だ。必要悪として決めつけられ、そうあるべき存在としてこの世の地獄に落とされただけの人間だ!」
すると、ピクピクと動いているだけだった、アヴェンジャーが、見えない速度で、士郎に飛びかかった。
「くっ!」
「ソレは、実体を欲しがっているのだ。君の肉体ならば、これ以上ない“殻”となろう。」
士郎は、膝をつき、聖杯を落としそうになりながら、自分の身体に染みこんでくるアヴェンジャーからの苦痛に耐えた。
だが、ただの苦痛ではない。
まさにこの世全ての悪たらしめる、あらゆる苦痛を孕んだこの世の地獄の歴史そのものを体感しているような苦痛が脳を駆け巡った。
「彼にすべてを委ねたまえ。さすれば…、その苦しみから解放されるであろう。」
「……いいや…。」
「むっ?」
「俺は……、背負う! 例え、どんな重い過去だろうが、なんだろうが、この足が折れるなら、それ以上に鍛えて背負って生きてやる!! アヴェンジャー! いや、この世全ての悪! お前を俺の中で受け止め、背負ってやるよ!!」
士郎がアヴェンジャーを抱きしめるように腕を組んだ瞬間、黄金の杯が凄まじい輝きを放った。
「ば…、馬鹿な…。」
綺礼が愕然としながら、その光景を見た。
黄金の輝きの中。士郎は倒れた。
***
「……い…、おい。シロウ。」
懐かしい……、青年の声が聞こえた。
「ちょっと見ない間に、大っきくなったな…。見違えそうになったぞ。」
「……ユーリ…兄ちゃん?」
ソッと目を開けた士郎の頭に、ポンッと優しく手が置かれた。
黒い髪の毛と、茶色が入った瞳…。そして、鋼をも越えるような筋肉の身体。
忘れもしない…。自分の起源。
黄金の光が舞う、不思議な空間の中で、士郎とユーリ、二人だけだった。
「まったく…、こんなムチャしやがって。俺に追いつきたいからって、何もかも背負って…それで死んじまったら、意味ないだろ? シロウが待たせてる女の子がいるんだろ?」
「ああ……、桜…。俺、ユーリ兄ちゃんに紹介したい人がいるんだ。でも、ここにはいないんだ…。」
「可愛くて綺麗な女の子だろ? 知ってる。というか、今知った。聖杯が俺に教えてくれたよ。やるじゃねえか、シロウ。このこの。」
「へへへ…。」
「……頑張ったな。シロウ。よくやった。お前のおかげで、お前の世界は救われたんだ。」
「そうなの?」
「ああ、そうだ。……俺もあの時からずっとシロウにまた会いたいって思ってたんだ。再会を願ってくれてありがとな。」
「…うん。俺も、会いたかった。ずっと、ずっと…、ユーリ兄ちゃんを追いかけてたんだ。」
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