SS24 苦難と幸多き未来と…
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柳洞寺には、聖なる池が存在する。
しかし、その池と周辺は、今や聖なる姿を完全に失い、孔から垂れたであろう黒い泥によって満たされていた。
「よくぞ来た。」
「言峰綺礼!」
「見たまえ、空を。あの孔を。」
綺礼が空に空いた黒い孔を示した。
「あれこそ、聖杯の中身。この世全ての悪によって染め上げられた、すべてを呪い、死に至らしめ、そして悪意によって願いを叶える力そのもの。どうかね? これを使えば、君の願いは叶うが?」
「もう…聖杯なんていらない!」
「つまり、君が会いたいと願っていた人物に会う機会を永遠に失っても良いということかね?」
「あの災禍のことを忘れた日なんてない…。それと引き換えにユーリ兄ちゃんに会えたとしても…! ユーリ兄ちゃんはそれを許しはしないだろう!」
「……私は正直…、君に期待していたのだ。」
「なに?」
「君が衛宮切嗣に育てられ、その志を受け継ぎ、愚直にそれを実行しうる人間に育ち、そして私と…こうして対決することになる日が来るのを。しかし…、実際の君にはすでに、起源となる人間がすでにいた。ユーリと言ったか? その人間の在り方に、切嗣は敗北した。あの災禍を招いた、まっすぐすぎた己が正義の在り方に従う生き方を受け継がせられなかった。」
「な……。」
士郎は、綺礼の口から吐き出された真実に顔色を変えた。
「セイバーから聞いていないのか? あの日…、この冬木の地を焼いた災厄を起こしたのは、衛宮切嗣がセイバーに聖杯を破壊させたからだ。」
「……セイバーが破壊したのは聞いている。」
「君は恨まなかったのか? あの災厄を招いた者達を。」
「……何も思わなかったと言ったら、嘘になる。けれど、それはもう過去のことだ。俺は、今(現在)を生きている!」
「なるほど。決して過去にとらわれず、まっすぐ前を向いて、今(現在)と未来を見据えるか…。それが君の言う筋肉魔法の本質なのだろう。そして、ユーリという人間の在り方だな。ならば、その重たい過去のすべてを背負って生きれるというのか?」
「もちろんだ! 生きてやる! 例えこの足が折れそうになろうとも…、それならばそれを支え、背負えるだけ鍛えに鍛えて背負って生きてやる! 桜と一緒に!!」
「そういえば、遠坂には、次女がいたな…、確か間桐に養子入りさせたとか…。その次女か。……分かった。君の生き方はとてつもないものだ。認めよう。」
「てめぇは、さっさと降参しやがれ!!」
「そうだ。良いことを教えてやろう。イリヤスフィールの心臓…すなわち聖杯だが…、それは私の中にある。」
「なっ!」
「つまり、これから起こる災いを止めたければ、私を殺すしかないのだ。…君に、出来るのかね?」
「やってやるさ!」
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