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『魔術? そんなことより筋肉だ!』
SS2 凜と弓兵の憂鬱
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び名通り、勝つためならどんなことでもやってきた。
 だが、士郎にはまったく勝てない。自分の命に等しい自慢の魔術を、筋肉魔法なる非常識でことごとく防がれ、心が折れてしまった……。
 こんな屈辱を受けて黙っている凛ではない。
 それ以来、凛は、ことあるごとに士郎に突っかかり、暇さえあれば勝負を挑んだりもした。
 しかし、結果はいつも惨敗……。
 士郎の筋肉魔法を前に打ち砕かれた。

 しかし、転機は訪れる。

 それは、第五次聖杯戦争の開催であった。
 数多の強力な英霊を召喚し、戦い抜き、そして万能な願いを叶える聖杯を手に入れる戦い。
 凛にとっては、このうえない機会だった。
 これならば、士郎に勝てると! そして遠坂の悲願である、根源へ至り、平行世界へ通じる強大な魔法を手に入れられると。
 そして、儀式を行うのだが…、うっかりという父・時臣からのいらん属性を色濃く受け継いでいた凛は、うっかりをやらかし、召喚予定だったセイバークラスのサーヴァントではなく、アーチャークラスの謎の英霊を喚ぶに至った。
 言うことを聞かない彼に、業を煮やした凛は、三回しか使えない貴重な令呪を、一回使ってアーチャーを従わせた。結果、アーチャーは凛を認めた。
「アーチャー、私…どうしても倒したい敵がいるの。」
「ほう? どんな奴だ?」
「一言で言えば…、筋肉バカよ。」
「きんに…?」
「よりもよって私の同級生なんだけど…、衛宮士郎っていうのよ。」
「!?」
「? どうしたの?」
「いや、なんでもない…。しかし、単なる同級生というわけではあるまい?」
「そうね。何しろ、ああ見えて魔術師なのよ。」
「そうか…。」
「ただの魔術師だったなら、どんなによかったか!!」
「凛?」
「聞いてよ、もう!!」
 凛は、アーチャーの胸をポカポカと叩きながら、これまでの敗戦歴を語った。

 凛の愚痴を聞きながら、アーチャーは…思った。


 それは、自分が知る衛宮士郎なのかと…。


 アーチャーは、凛に悟られぬようそう考えつつ、落ち着いた凛と共に、最初の聖杯戦争の戦いに赴いた。
 そして、アーチャーは、凛の言っていたことが現実であること、そして自分が知る衛宮士郎とは、だいぶ……かけ離れた存在となっていることを目の当たりにする。

「危なかった…。この鍛え抜いた大胸筋がなかったら、心臓一発だった……。」
「大胸筋、鍛えたぐらいで俺の槍を防げるかよ!!」

 ランサーの叫びは正論だ。
 気合いと共にありえないほど膨張し、上半身の服を軽く破った鋼のような筋肉。
 必ず敵の心臓を穿つとされるランサーのゲイボルグを、その胸板(大胸筋)で簡単に防いだ士郎。


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