兄妹なのか友情なのか
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ーで殴る」
右ストレートでぶっとばす。
「それと同じよ。アーチャーもそなたと同様のリアクションを取るであろうな。で、シェロよ。余は喉が渇いたぞ」
「そんな事もあろうかと、赤ワインを持ってきておいた」
ふふん、と得意になって鼻を鳴らす。『こんな事もあろうかと』という訳ではないが、昨夜結局飲み損なっていたのである。赤ワインを持参した俺に死角はない。ネロは呆れたようだ。朝っぱらからそれかという小言を聞き流す。
俺から酒を取ったら何も残らないのだ。グラスとテーブルを投影してセッティングする。ネロと自分の分をグラスに注いでいると、華美なる美女は眉根を寄せながら苦笑した。
「このようなものに投影魔術を使うとは……」
「堅物のアーチャーならしないだろうな。けど俺は使えるものは使う主義だ。自分の能力だろうがな」
アーチャーは羽目を外して『フィィイッシュ!』とか言うぐらいになると不明だが、流石にそんなふざけた感じになる事はないだろう。ニヒルを気取る皮肉屋だし。
「合理的なのは結構だが、余には現代の酒は度が強すぎる……これは大丈夫なのか?」
「問題ない。度は強くないよ」
第二特異点で、俺が振る舞った酒を盛大に噎せたネロである。若干の苦手意識があるのかもしれない。酒好きとして看過できない問題だ。故に最初は弱いものから慣らしていくのが無難である。
そんな訳で乾杯――しようとすると、プシュ、と空気音がして扉が開いた。来客かと思うと、訪れたのはネロのサーヴァントであるアタランテであった。
「む、シロウか」
「お邪魔してる。っと、それは……」
アタランテはその手に小皿を持っていた。そこには切り分けられた林檎が載せられている。
見ればもう一方の手には、あと一口でなくなろうかという林檎があった。赤々とした皮と、林檎の芯も丸ごと食しているらしい。しゃく、と小気味良く咀嚼している。唇が果汁で潤っていた。野性的なのに気品がある彼女のそれには色気すら感じるが、一先ず注意しておく。
「食べ歩きとは行儀が悪いぞ」
「目くじらをたてるな。朝から酒を酌み交わそうとしている汝に言えた口ではないだろう」
「それを言われると弱るな……」
と言いつつ、グラスを一つ追加する。酒の席、来るもの拒まず去るもの逃がさず。アタランテは苦笑しつつも断りはせず席に着く。
「ネロに何か用でもあるのか? なんなら席を外すが」
「気にするな、用はない。ここは私の部屋でもある」
「? アタランテの部屋は隣だったはずじゃあ」
「マスターが同じ部屋にいてほしいとぐずるからな。それに同じベッドで寝ろなどとワガママを言う。まるで大きな子供だ」
微笑むアタランテとネロの関係は良好のようである。今度は俺が呆れる番だった。
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