生きているのか死んでいるのか
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。懸命に戦った。いや、戦ったと言うより、抗ったのか。訳の分からない魔術儀式という、人様の住んでる街中でドンパチやらかそうとする連中を追い出したくて。
結果は、振り返るまでもない。自分のものではない強迫観念に突き動かされ、己の意思であると信じていた足跡は、このカルデアに辿り着く為の洗脳だった。
長く、辛く、苦しい旅路だった。何故命を懸けてこんな事をしている? 馬鹿らしい、阿呆らしい。そんな理不尽に対する憤怒が競り上がって来る。――いや、そんな事はどうでもいいのだ。俺は後悔していない。他人の理想がー、とか。カルデアに来る事は仕組まれていたー、とか。そんな些末事は気にするものじゃない。
「慎二……」
古傷ではない。未だに血を流していた。それに気づいていなかっただけで。心の出血が俺に空虚さを覚えさせていたのだ。
高校を出た後、何をしてもしっくりと来なかったのはなんでか。そうだ、俺が馬鹿をしてもケツを持ってくれる対等なダチがいなかったからだろう。――死ぬはずはなかったアイツが、俺が自失して下手をやらかしたから、死んだ。
桜はどう思っただろう。いや、今もどう思っているのか。きっと俺が死なせたようなものだと、知りもしないのかもしれない。
「……」
ふらふらと歩いていた。その足がカルデアの外に向かっているのに気づいた俺は、失笑して立ち止まる。出たら死ぬ、分かりきっているのに。
罪を罪とも思っていなかった。思い出しても、向き合うのが怖かったから無意識に思い出さないようにしていた。なんて惰弱――俺は死んで詫びるべきだろう、本当なら。
「――いや、待て」
自己嫌悪の想念に支配される直前、ふと思い返す。俺はなんで……慎二が死んだと思い込んでいるんだ……?
俺は慎二の死体を見たか? 慎二の葬儀に出たか? 慎二が死んでいたなら聖杯戦争直後の桜は落ち込んでいたはず。桜は何か気落ちした様子だったか?
「……」
桜は、慌ただしそうではあった。
あの頃の俺は誰の話も聞く耳を持たず、海外に飛び出した。だから桜が何を俺に言っていたかも覚えていない――当時の俺には人の言葉に耳を傾けられる余裕がなかったからだ。
もし、もし慎二が殺されていなかったら……? 入院していたとか、そんなオチだったら……? そもそも誰が慎二を殺すんだ。あの時に健在のサーヴァントは、アルトリアが倒したライダー以外の全騎。慎二が行方知れずになったのは、あのビルから逃げ出した時だ。
慎二を殺すとしたら、誰だ? 遠坂……は、ない。慎二を手に掛けたら、それを俺に言っているだろう。罪悪感をひた隠して。そもそも遠坂は甘い、殺しはせず記憶を奪う程度に収める。アイツはそういう奴だ。ランサーは? ……いや、そういえば誰がランサーのマスターだったのか
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