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人理を守れ、エミヤさん!
親子なのか自分なのか
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俺も聞こうとしていた訳じゃねぇよ。……ったく、なんだってこんな……アイリさんと切嗣の愛の巣だと思って遠ざかろうとしてたってのに」
「あら。愛の巣ですって、切嗣!」
「……」

 意味もなく武装のキャリコを分解し、点検している切嗣は完全に無反応だ。しかしその意識はこちらに向いている気がする。
 嘆息する。らしくない、ものの見事に頭に血が上ってしまっていた。俺は努めて血の気を鎮圧して冷静になる。

「言っておくがな、俺は正義の味方なんて立派なものじゃない。いいとこ庭師だ。滅私で人を救ったんじゃない、俺の裡に埋め込まれたお前の強迫観念に突き動かされて無謀な旅をしただけで、死徒を狩って回ったのは単なる害獣駆除の為だ。人が人と争うのを止められないと諦めたんだよ。救おうとする事を、お前の理想があったにも関わらず不可能だと投げ出した。だからせめて、目障りな不幸の種としちゃあ小粒もいいところの小者共を排除していただけだ」
「……はぁ。――この際だ、言いたい事を言っておこうか。まったく……死後守護者となった後にこんな下らない問答をする羽目になるとは……」

 エミヤは壁に背を預けて立っていたのを、俺の眼前に立ちはだかるようにして屹立する。

「いいか衛宮士郎。正義の味方とは思想ではなく行動と結果によって示される存在だ。その点で言えば貴様はそれに当たる。人々を救い感謝され、明確な悪を滅ぼす行動と結果は正義そのもの。オレや切嗣が目指した在り方だ」
「……僕はそんな立派なものじゃないけどね」
「は。見解の相違だなアーチャー。俺はエゴを押し通しただけだ。成した事はともあれ他人(おまえ)の理想がなければ、俺は今頃日本で警官でもやってたろうよ。借り物どころじゃない、俺はお前の影法師みたいなもんだ。
 いいか、正義の味方ってのは、結果とか行動に依らない。その理想を成就させようと邁進し、理想に殉じ、溺死する結末も受け止められる奴だ。まずは心ありきなんだよ。それ以外は粉飾に過ぎない。前提を間違えるな、純粋に救おうと奔走したお前が本物だ。俺は偽物なんだよ。……切嗣はまあ、うん。ノーコメントで」

 とりあえず此処は切嗣の部屋なので、部屋の主にも水を向けようかと思ったが、切り出したら微妙な気分になりそうだったのでやめておく。
 国際テロリストとして指名手配されてなかったのが奇跡とすら言える危険人物にして、魔術協会やらから蛇蝎の如く嫌われていた魔術師殺しだ。その二代目と目され一時えらい敬遠されて来た俺の気持ちは分かってほしい。
 切嗣は無言だ。どうでもいいが気配遮断するなと言いたい。地味に存在を忘れそうになる。もっと存在感出してこいよ、アンタの部屋だろ此処。

「日本の諺よね? 隣の芝生は青い、だったかしら」

 ふとアイリスフィールが言った。


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