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人理を守れ、エミヤさん!
親子なのか自分なのか
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も比べる事すら烏滸がましいわ』
『……分かっているさ。だが客観的に見れば劣等感を感じてしまう。奴は成し遂げた功績で生前のオレを超えているだろう。別にそんな功績(もの)に関心はない……が、別人だと理解していても平行世界の「エミヤシロウ」だ。どうしても比較してしまう』

 自嘲するように呟くのは、己の思考そのものを嘲笑っているようだ。それに切嗣が身じろぎする気配がする。

『オレは人々を直接悲劇から救おうとした。だが奴はその悲劇の元凶の一つを根本から潰していたんだ。直接救った人間はオレの方が多くとも、間接的にあの男は未来を救っている。――同胞を集い、個ではなく数で、己のエゴを押し通した。オレにはそちらの方が尊く思える』
「――なんだとこの野郎」

 無意識に足が動いていた。扉が開き、中にいたネームレス・レッド目掛けてワインの瓶を投げつけていた。
 時速200qで迫ったそれを、驚きながらも掴み取った反応の早さは流石と言える。こちらを識別するなり、アーチャーはばつが悪そうに顔を顰めた。俺も苦虫を瞼で挟み潰したような顔をしてしまう。反射的に釣られてしまった格好だ。

「あら」

 アイリスフィールは目をぱちくりさせる。とても成人女性には見えない愛らしさだ。イリヤも後五年ぐらいしたら《《こう》》なるのかもしれないと思うと、色んな意味で死にたくなった。
 主にアイリスフィールを見てイリヤを連想した事が最低である。いや、アインツベルンの親子なのだから、瓜二つになって当たり前なのだけど。
 違うのは性格から来る表情と雰囲気、髪型だろう。アイリスフィールはロングヘアーでザ・プリンセスといった感じだが、イリヤは肉体の成長に伴い活達な印象のショートヘアー少女へと変身している。――ん? よくよく考えたら連想してしまったイリヤとアイリさんは全然似てなかった。

「……何をする」
「『何をする』じゃねぇよ。何を寝言垂れてんだテメェ」

 アーチャーは聞かれたくない事を俺に聞かれた気分なのだろうが、ばつが悪いのはこちらも同じだ。なんだって入ってしまったのか、どうしてこんな事を聞いてしまったのか。本当、衝動に突き動かされてしまった。
 すっかり真っ白になった髪を掻き毟る。違うのは肌の色だけの、例の一件まで根底からして別人だと思っていた男――掛け値なしに正義の味方そのものと尊敬していた存在が英霊エミヤだ。俺自身が衛宮士郎であると《《思い出した》》故、遠回しな自画自賛のようでこっ恥ずかしいが、その想いは今も変わらない。

「なんだ。まさかとは思うが記憶映像(あんなもの)を見て妙な思い違いをしてるんじゃあないだろうな」
「思い違いだと? 何がだ」
「俺を正義の味方だとでも思っていそうな口振りに聞こえたぞ」
「……立ち聞きか。趣味が悪い」

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