剣なのか鞘なのか
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がらに思い当たった。
「だったら、どうして……!」
アルトリアが顔をあげる。滴が頬を伝い、顔を濡らしていた。哀しみに染まったそれに、俺は絶句する。
「どうして、そんなにも……!」
「……」
「黙ってないで、何か言ってください!」
「――待て、私の側面」
返す言葉が見つからない。何を言っても空虚になる、軽薄になる、そんな気がしてしまった。
アルトリアが激昂するも、しかしオルタは静かに振り返り俺を見た。
「仕方がないだろう。我らの感覚ではシロウと別れて一ヶ月も経ってはいない。しかしシロウの時間は十年も経っていた。責めるのは酷だと自分でも分かっているはずだ」
「分かっています! でも、だからって……簡単に呑み込めるはずがない!」
「受け入れろ。我らはもとより、最後には別れる事になると、あの時から覚悟していたはずだ」
「――それはっ! ……そんな、事は!」
「過去は大事だ。しかし、数奇な運命の巡り合わせで、我らは再び縁を結んだ。ならば大事にするべきなのは過去ではなく現在で、そして我らとシロウの紡ぐ未来だろう。――シロウ、私は貴方を愛している。シロウは……どう、なんですか」
「――愛してるに決まってるだろう」
愛、という言葉に照れ臭さを感じる青さはなくなっている。彼女の事を忘れたことなんて一度もなかった。だからこれだけは自信を持って言う事が出来た。だが、
「信じられません」
オルタは、そう告げる。……当たり前だった。俺には言い返す資格がない。
しかし不意にオルタは微笑んだ。予想しなかった表情に戸惑う。
「ですので、信じさせてください。貴方は私の鞘です。故に――言葉は要らない。行動で示した事だけを信じましょう」
オルタはそう言って、そっと俺の胸の中に収まってきた。
「――いい、のか?」
「言葉は要らないと言ったはず。ええ、シロウの一番が私であるなら、それでいい。私から言えるのはそれだけだ」
「オルタ……」
――そうまで言われて、尻尾を丸めて逃げる腰抜けではない。腹を決めた。
「俺がセイバーという剣の鞘なのは否定しないが、俺の起源も剣だぞ。実はオルタの方が鞘なんじゃないか?」
「ほう。面白い冗談です。確かめてみましょう」
不敵に笑い合う。
俺はオルタを抱えあげ、ベッドに向かい。
「何をしてるんですかぁぁあああ!?!?」
既にベッドにいたアルトリアに殴られ、ぐふっ、と苦悶の声を漏らして、ぱたりと倒れた。
「――あっ」
「し、シロウ……?」
「シロウぉおおおおお!?!?」
「ばっ、馬鹿か貴様!? 折角そういう空気に修正したというのに……! シロウ、無事ですかシロウ! 起きてください、シロウ――!」
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