剣なのか鞘なのか
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糧庫が空でした、なんて事になったら笑うに笑えない。
ついでに俺の生き甲斐の為に素材を生み出しておく。無限に湧く食材――その品質も勿論最高峰だ。ランクEX宝具とすら言える大釜なのだからそこは心配要らない。そんな訳で取り出したるは無数の果実である。
――話は変わるが仕事の合間の飲酒は悪だろうか? 毛むくじゃらな小動物から、頭頂部に前肢でゲシゲシと連続打撃を受けながら自問する。
普通に考えたら悪だ。最悪の部類と言える。通常の企業であれば解雇一直線であるのは間違いない。
しかし生憎と、悪徳ブラック企業カルデアに通常の規定が通るだろうか。答えは否、二十四時間勤務もザラ、適度に気を休めねば過労死不可避。であれば独自の裁量で休んでもいいのではあるまいか。殊に俺なんてプライバシー大破壊視聴会を絶賛開催されている。傷心の俺には自らを慰める慰安タイムが与えられて然るべきだ。
うむ、理論武装に綻びなし。あったとしても裁決の権利は俺の手にある。俺議会満場一致で可決だ。
「フォーウ! ドフォーウ!」
「痛てて……待て、落ち着けフォウくん。というかだな、君は桜に付いていてくれるんじゃなかったのか」
四六時中一緒にいるわけあるかと顔面に尻尾が叩きつけられる。目に毛が入るので勘弁して欲しい。弓兵兼指揮官は目が命なので切実に止めて頂きたい。
賄賂か? 賄賂を求められているのか? 是非もなし、仕方がないのでフォウにも大人の味を進呈せねばなるまいて。
猪口を用意する。八十年ものに匹敵するワインとて、ダクザの大釜から取り出した素材を流用すれば簡単に仕上がる。いや、俺の酒造の腕もあるのだがな。多分に大釜のおかげでもあるが。
ワインを作り、大釜に注文して酒造したワインを浸すこと十秒。するとあら不思議、年代物に早変わりという寸法だ。ふはは、これは工夫次第で神代の酒を作り出す事も夢ではない。
竜の牙やら逆鱗、その他の貴重な資源を投じてまで酒を作る必要はなくなる。我が腕の研鑽の為に余裕があれば是非チャレンジしたいものだが、今ばかりは多少の怠惰も許されよう。
「ささ、一献どうぞ、フォウ君」
「ふぉ!? きゅうきゅい、ふぉーう!」
「味も知らずして批判するのはお子様だぜ。まずは味を知り、そしてその上で俺を批判するなら聞こうとも。これは心の栄養剤、俺の言い分を否定すると言うのなら――恐れずして掛かってくるがいい!」
「……」
フォウは物凄く微妙な目で俺を見ていた。
なんとなく言ってる事が分かるのは、何もサーヴァントのスキルのようなものの恩恵があるからではない。
単純な話だ。確かな知性を持つと認め、確りと向き合えば、言葉は通じなくても意思は通じる。俺みたいに言葉が通じない外人さんとの触れ合いが多くなると、相手の言わんとする事
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