第百十一話
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第百十一話 今で言うと
博士は小田切君に源氏物語のことをさらに話した。
「紫式部が書いておったが」
「そのことはもう」
「うむ、一般常識じゃな」
「学校の授業で習います」
小田切君もこう答えた。
「古典のテストにも絶対に出ます」
「そうじゃな」
「ですから僕も知っています」
「ではあれが小説投稿サイトの小説みたいだったのは知っておるか」
「投稿サイトですか」
「そうじゃ、今多くあるな」
「はい、ネットでは」
それこそスマホで手軽に投稿出来るし閲覧も出来る。
「僕も読んでいます」
「そうじゃな、しかしな」
「それはですか」
「そうじゃ、源氏物語もな」
「今で言ったらですか」
「小説投稿サイトに投稿してじゃ」
そのうえでというのだ。
「大人気になったな」
「そうした作品ですか」
「人気になってどんどん書いていったのじゃ」
作者の紫式部がというのだ。
「そうした作品じゃ」
「そうですか」
「うむ、もっと今風に言うと出版やコミカライズひいてはアニメ化になっておるな」
「そう言うと俗ですね」
「紫式部は宮廷に仕えておったから収入はあったがのう」
それも摂政、関白となる藤原道長の娘であり中宮定子のお付きであった。宮廷の女御集の中でもかなりの立場だった。
「当時は収入にはな」
「つながらなかったですか」
「完全に趣味で書いておった」
「そう言うと同人誌ですね」
「そうじゃな」
「完全に小説投稿サイトですね」
小田切君はあらためて思った。
「それだと」
「結局小説というか文学はそうじゃ」
「自分が頼んで書いて」
「そして人気が出る時は出るものじゃ」
「そうして後世に残りますか」
「そうしたものじゃよ」
博士小田切君にあっさりとした口調で話した。
「残るものは残る」
「人気もですね」
「出る時は出るものじゃよ」
こう小田切君に話すのだった。
そのうえで博士は自分からコーヒーを煎れた、キリマンジャロを豆から煎れてそうして美味しそうに飲むのだった。
第百十一話 完
2018・12・5
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