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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの戦訓 5/5
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に比肩する怪物である。
 決して表舞台には語られない死闘は、殺人貴も交え幾度も繰り広げられた。その最終決戦の場に士郎は居合わせる事はなかったが、エンハウンスと殺人貴によってトラフィムは死亡し、死徒の勢力図は大幅に書き換えられる事となる。

 その後始末、或いは別件の任務を割り振られたシエルが一時離脱。バゼットもまた時計塔に呼び出され一団を離れ、エンハウンスは瀕死の重態となっていた故に療養を余儀なくされた。士郎は一人になると、無理はせず活動を自粛。一時ばかりの平穏を楽しむ事となる。
 と言っても、多方面に怨みを買っている身だ。死徒や、後ろ暗いもののある魔術師が士郎を襲わないとも限らない。故に士郎はエンハウンスを冬木に連れていき、衛宮邸にて療養に努めさせる事にした。瀕死とはいえエンハウンスなら、士郎の身内を守ってくれると見込んでの事だ。
 しかし士郎は目の当たりにする。長年留守にしたせいか――士郎への想いを盛大に拗らせた、妹分の少女達の惨状を。

 士郎は後に述懐している。地獄のような天国だった。事が済んだらすぐに帰る予定です、と。

 冬木から逃げるようにロンドンに向かった士郎は、凛に泣きついた。あなたの妹さんがおっかないの、助けて。大の男が矢鱈と情けない。そんな士郎に凛は爆笑した。ちっとも変わってないわねアンタ! なんて。
 士郎は逆上した。処女拗らせて面倒臭い奴になりやがってこの女郎! そんなだから男が寄り付かないんだよ! ――その売り文句は第三次テムズ川ダイブ事件の引き金となった。
 ただし士郎も三度目はただでは落ちなかった。凛を道連れに落ちたのだ。最悪! アンタほんと最悪! 風邪を引いて言語能力の低下した凛に対し、健康体のままピンピンしていた士郎は笑った。笑いながら凛の看病をしていると――なんでか奇妙な空気となっていた。

『……あれ?』

 なんでそうなったのか、よく分からないが。士郎は首を捻っていると、顔を真っ赤にした凛に追い出されるままロンドンを後にした。
 バゼットはおらず、シエルもまだ別件の任務に当たっている。エンハウンスも復帰には時間がかかる。時折襲撃してくる死徒や魔術師を返り討ちにしつつ、士郎はとりあえず何をしようかと首を傾げ。

 思い立った。

『そうだ、慈善事業を始めよう』

 死徒の勢力図が塗りかわるのを待つのも馬鹿らしいが、かといって一人で何かをしようとすれば死にに行くようなもの。無理はしなかった。
 とりあえず、出資者を募ろうと各地を巡ってみる。通りかかったブリュンスタッドの城に顔を出し、顔馴染みとなった殺人貴と真祖の姫を冷やかして殺されかかったり。一日泊めてもらったはいいものの、夜のあれこれを聞く羽目になって一睡も出来なかったり。
 客がいるのになんて奴らだ末長くお幸せにね! 
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