士郎くんの戦訓 4/5
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最大の好機を掴んだと士郎は確信していたのだ。
というのも、その祖の子に当たる死徒が、反逆したのだという。祖と子の代替わりをかけた死闘は、介入して根絶やしにする絶好の機会。相手は死徒二十七祖、可能な限りいい条件で事を構えるべきだったのだが――士郎は此処に、単独で攻め込むとバゼットに告げたのだ。
何故か。それはこの件の他にも、同時に隠れ潜む魔術師の居場所を探り当ててしまった故だ。これまでの経験から一刻の猶予もないと看破した士郎は、バゼットにそちらへの対処を頼んだ。
見過ごせなかったのである。しかし祖を襲撃する好機もまた千載一遇、二兎を追う者は一兎をも得ずと云うが、今回ばかりはそうするしかない。士郎は年上の女性なのに、子供みたいに別行動へ難色を示すバゼットの頭を撫で、微笑んだ。
俺が心配なら、速攻で片付けて、応援に来てくれと。バゼットは赤い顔で頷き、すぐに彼の許を発った。
士郎も行動を開始する。バゼットを信頼していない訳ではないが、投影魔術に関して知る人間は少ない方がいい。祖の特異さを考えれば、宝具を投影する事もあるだろう戦いである。可能な限り最大のパフォーマンスを発揮するなら、一人の方がいい。
士郎はそうして二十七祖の一角――十八位に列される怪物退治に向かった。
そこで出会ったのだ。新たな同志となる、半人半死徒の男、エンハウンスと。
艶のある銀の髪、赤いコートを羽織ったその男と十八位の死徒の祖。その戦いに介入した当初は両者の潰し合いを静観し、好機が到来すれば纏めて始末するつもりだった。祖とされるほどの怪物の性能、能力を計り、今後の活動の指標とする狙いもあった。
だが士郎は興味を抱いた。銀髪の青年が、完全な死徒ではなく。何より祖より奪ったらしい魔剣を振るう半死徒の青年が、憎悪も露に死に物狂いの形相で牙を剥いていたのだ。
不本意に死徒とされたのだろう。その過程で大切なものを失ったのかもしれない。しかしその背景を推し量る意義はなく、士郎は彼を利用できると踏んだ。あれだけの憎悪、ただ事ではない。もしかすると、その憎しみが死徒全体へ向くかもしれないとなれば、士郎との利害は一致すると言えた。
士郎は銀髪の青年を援護する事にした。
強化の魔術によって、異形の怪物銃となった対物ライフル・バレットM82で狙撃する。祖の頭部を吹き飛ばし、窮地にあった半死徒の後方に陣取る。
『……アンタ、何者だ?』
『衛宮士郎』
『ハ――気に入らないね。これはオレの戦いだ。だが、勝手にしろ。アンタにはアンタの戦いがあんだろう』
『そちらの名前は?』
『エンハウンスだ』
『了解、援護する』
元々、ほぼ拮抗していたのだろう。エンハウンスに士郎がついた事で、十八位の祖は追い詰められていく。
だが一手足りない
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