士郎くんの戦訓 4/5
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なる。己がただ逸っただけの、愚か者であると。
『ぁ、ぁあぁ、あああああ――!?』
殺した、殺した、殺した。
隠れ潜む魔術師を探し出し、これを討ち。その研究成果を魔術協会に横流しする。士郎に利のある礼装だけを回収する。そんな事を幾度か繰り返し、隠れているモノを暴き出す作業に手慣れてきた頃。士郎は痛恨のミスを犯した。
断じて。断じて言おう。士郎は最善を尽くし、最善の結果を得た。水際で被害を食い止めた。だが、それこそがミスだったのだ。
或る魔術師を追っていた。隠れ潜んでいたモノを暴いた。だが、士郎が辿り着いた時には、既に死徒化の秘薬が外部に漏れ、死徒と化した無辜の少年が被害を拡散させてしまったのだ。
士郎は元凶の魔術師を仕留めていた。そして秘薬が外部に漏れていた事にも気づいていた。迅速に対処に移ろうとして――しかし間に合わなかった。単純に、手が足りず。時間が足りなかったのである。
己の愚かさを呪った。
――俺一人でも出来る、等と傲っていた。
全ては士郎が単独で活動していたが故の失態。協力者を作り、複数で当たっていれば防げた事態だったはずだ。
知っていた。弁えていた。人間一人で出来る事など限られている。なのに二年間の活動を、一人で上手くやれていた為に傲っていた。一人ででも戦い抜いてみせる、なんて。思い上がりも甚だしいと気づかなかった。
平和な田舎町が、死都となった。士郎は無実の人々を、罪もない人々を、己の手で殺戮せねばならなくなった。――士郎に遅れてやって来た、魔術協会の魔術師の団体が、死都を滅するのに加担しなければならなかった。
心が折れそうになった。
死にたくないと、涙する死徒の少年を、己の手で殺した。
心が砕けそうだった。
この子だけはと懇願する、我が子を守ろうとする死徒の女性を親子共々射殺した。
心が萎えそうだった。
――なんて事を。なんて馬鹿な事を、俺はしてしまったんだ……!
後悔先に立たず。膝を折ろうとした。だが、士郎は立ち止まる事が出来なかった。
もしここで止まれば、士郎の増長の為に防げなかった悲劇を、ただの轍としてしまう。萎えそうな己に活を入れ、士郎は二度と同じ失敗をしない為に協力者を得ようと考えた。
真っ先に思い浮かんだのは、執行者。封印指定対象の魔術師と対する事の多い士郎なら、利害は一致する。味方につけるのに苦労はしないはず。そして連想されたのは、士郎と面識のあるバゼットだった。
士郎は封印指定対象の魔術師の刻印を手土産に魔術協会と交渉した。自分がこれまで上げた過去の成果を例に挙げ、今後も活動を続け確実な利益を手にする為に、封印指定執行者と行動を共にさせてもらいたいと。その執行者はバゼットを希望した。
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