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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの戦訓 3/5
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実に損耗を強いる。何度死徒を殺したのか数えるのも億劫だ。しかし士郎は気配を殺したまま佇む。

 女は強い、しかし魔獣らを使役する死徒は狡猾だった。女を逃がさないように常に包囲を崩さない上に、それぞれが女を遥かに上回る身体能力を持っている。この女さえ殺せれば、と死徒は躍起になっているらしい。
 代行者や執行者などの精鋭を屠れば、後は烏合の衆。封印される前に聖堂騎士も屠れる自信があるのだろう。聖堂騎士団の楯と成り得る彼らさえいなければ。

 しかし、女はそれでも粘る。冷徹に戦闘を押し進めている。やがて養分が足りなくなってきたのか、死徒は焦りを見せ始めた。そろそろか、と口の中で呟く。
 灰の外套を肌蹴、鞘に納めていた干将を手近の木の幹に突き刺し、莫耶を虚空に溶かす。今は不要だ。そして対物ライフルの引き金に指を掛けゆっくりと銃口を定める。

 女の疲弊が極限まで高まっていた。地面が死徒の血や肉片でぬかるんでいる。それに足を取られ転倒した瞬間、虎型の魔獣が襲い掛かり死徒は勝ち誇った。
 その頭部を狙撃する。強化した身体能力に物を言わせた二連射は、虎の魔獣と死徒の獅子頭を吹き飛ばした。流石に頭が無くなれば、再生するまで視覚と嗅覚、聴覚は死ぬ。女は咄嗟に転がって死地を逃れ、狙撃地点に目を向けてきた。

『――援護する』

 言いながら更に二連射し、羆と大猩々の頭部を吹き飛ばす。素早く後ろ手に莫耶を投影し、あたかもそれを鞘から抜き放ったようにしながら、死徒の視界が潰れている内に投擲。

『何者かは知りませんが、助かります』

 冷徹な声音には、しかし微かな安堵の色があった。戦闘技術は卓越していながら、精神は張り詰めていたのだろう。故に疲弊していたとはいえ、足をとられて転倒してしまった。
 死徒の頭部が再生する。怒り狂って士郎を睨む獅子頭。士郎は嘯いた。『お前が喰らった街の人間の怨みだ、此処で死ね』と。すると死徒は憎悪の滲む瞳に喜悦を滲ませ、自らの巨体の腹に手を突っ込んだ。――奇妙な膨らみがある故に怪しいと睨んでいたが。案の定か。
 それは、白野だった。人間を喰らい、その養分を補給するつもりなのだろう。士郎が街の人間の怨みと言ったから、これ見よがしに見せつけながら喰らおうとしている。士郎は失笑した。馬鹿が、と。獲物を前に舌舐めずり――三流のする事だ。

 白野の小さな体を、頭から食い潰さんと顎を開く獅子の後頭部に、木の幹に突き刺していた干将に引き寄せられた、投擲しておいた莫耶が突き刺さる。慮外の一撃――干将莫耶のオリジナルは対怪異に絶大な威力を発揮する。今回投影した干将莫耶は、英霊エミヤが好んで投影する物をオリジナルに近い性能にしている故に効果は莫大だった。
 後頭部に突き立った莫耶に悲鳴を上げ、動きが止まる寸前に木の幹の干将を引き
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