士郎くんの戦訓 3/5
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の外れにある森に連れて行きそこに固まっていた住人達と合流する。
少ない。たったの、十名ほどか。
だがこれが限界だった。己の力の無さを悔やむも、後悔に浸る暇もない。士郎は一番重態だった岸波夫妻の旦那に応急処置を施し、彼らにここで騒ぎが治まるまで動かないよう厳命する。
彼らに、死徒に噛まれた者がいないのは確認済みだ。
これだけ組織立っての行いだ、下手に助けを呼べば犠牲が広がるだけだと説明し、決して勝手な真似をするなと言い聞かせる。そんな士郎に縋りつく女がいた。白野の母だ。彼女は今まで気絶していたが、目を覚ますなり取り乱して士郎に縋ったのだ。娘を助けて、と。士郎はそれに力強く頷いてその場を離れる。重態でも意識を保っていた白野の父に、事の次第を聞いていた。曰く、化け物に襲われたと。娘が連れ去られた、と。
迷いなど有り得ない。士郎は死徒を追った聖堂教会の代行者や騎士団、魔術協会の執行者らを目撃していた。それを追跡すればいい。その先にこそ、白野がいる。――既に殺されている可能性は高い。
その場合は最悪だ。死徒に噛まれ、直後に食屍鬼と化す事はまず有り得ない。死後すぐに活動を開始する訳ではなく、死体となった後に脳髄が溶け、魂が肉体から解放されるまでに数年をかけるのだ。そして起き上がったモノが、死徒となるのである。
故に白野が死徒として復活する事はまずないと言える。何故なら死徒に噛まれ、死んでいた場合――その遺体を、燃やし尽くすのだから。
士郎さん――白野の笑顔と、声が脳裏を過る。口の端を噛み、その結末が訪れない事を祈った。
何に祈るのか、神か、悪魔か。――いいや、違う。そんな偶像に縋る意義はない。そんな異形に甘える意志はない。祈りの対象は、白野自身だ。あの娘が生き延びられる運命に祈った。その運命が自分である。ならば、一秒でも早く駆けつけねばならない。助けて、士郎さん。そう彼女は言った。なら、助けに行くのが俺だと士郎は決めている。そう、それは――エミヤシロウだからではなくて。士郎が元来、助けを求める声に背を向けた事などなかったが故の――
死体が、転がっている。
少女の、死体。
『――』
残像を引いて、森林の中を駆け抜けていた時の事だ。士郎は咄嗟にその傍に立ち止まり、遺体を確認する。――金髪の、見知らぬ少女だった。
黒衣を纏っている。十字架を首に提げていた。白野ではない。それに安堵する己を嫌悪し、彼女の冥福を祈る。せめて彼女が信じた信念が報われるように。
辺りを見渡せば多数の遺体が散見される。年齢はまばらで男女の境もない。それらの遺体は少女同様に、体の何処かが大型の獣に捕食されたように食い千切られていた。
そして太い樹木が薙ぎ倒され、大穴を
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