士郎くんの戦訓 3/5
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せば後々の禍根となるのは必定。ここで滅するぞ。この街を滅ぼしてでも』
そんな会話が成されている。だがそんなものに耳を傾ける余裕は誰にもあるまい。逃げ惑う人々は訳も分からぬままに切り裂かれ、焼かれ、滅されていく。
誰が噛まれているか分からない故に。疑わしきは滅ぼす、殄勠の命が下っている故に。
浄化が進む。長閑な街が、死都となっていく。
その紅蓮を、目に焼き付ける人々がいて。人の死が、心に焼き付く者がいた。
必死に息を潜め、隠れる者もいる。だが――巻き込まれる。元より逃げ場などない。死徒を見つけたぞ! その声に続々と参じる聖堂騎士、単独の群れから成る代行者。漁夫の利を得んとする魔術協会の蒐集者達。
代行者の一人を引き裂き、一個の吸血鬼が死に物狂いで血路を拓いて逃走していた。
死闘が繰り広げられる。精鋭であるはずの聖堂騎士や、魔術師達が犠牲を払いながら死徒を追い立てていた。着実に追い詰めていく。やがて死徒は衆寡敵せず、多少の損耗は度外視して逃げの一手を打った。
結界に囚われる訳にはいかぬ。彼もまた必死であり。自らの傷を癒す為に餌を求めた。
逃げ惑い、隠れ潜んでいた幾人かの無辜の住民をその場で喰らい、己の養分とする。そして自らの手足である魔獣を使役し非常食を確保した。囲みを突破し死徒が逃げ去る。殺戮者達がそれを追う。一団を指揮する者に、或る者が問い掛けた。どうしますか、と。その問いの意味は。
『浄化せよ。この街は、既に穢れている』
誰が噛まれているか分からない。故に根刮ぎ滅するのみ。
一部の精鋭が死徒を追った。残された聖堂騎士らが浄化の炎を掲げる。
隠れ潜んでいた者は、止まらぬ殺戮に絶望していた。こんな所で、こんな訳もわからないまま死んでしまうのか。殺されてしまうのか。
その絶望の火の海。燃やし尽くされるモノ。残骸に呑まれる。そして此処に、殺されるまでもなく火に炙られ、息絶えようとする者もいた。
『ああ――誰か、頼む……助け……』
仰向けに倒れ、虚空に伸ばされた手が、力尽きて地に落ちる。
だが、落ちる寸前。その手を掴む者がいた。
『――任せろ』
それは。
先刻別れたばかりの、精悍な顔立ちの青年だった。
火の手を放った者らの正体を、一目で察した士郎は、彼らと事を構える考えを棄却した。
しかし救える者を救わない訳にはいかない。士郎は彼らの目を盗み、時に発見される恐れが高い場合は容赦なく不意を打ち射殺した。忍び寄り、双剣により切り裂く事にも躊躇はない。
士郎は自身が保護した者を、街の外れまで運んでいた。或いは安全な地点を知らせ、自身の脚で動ける者は誘導した。今、最後に岸波夫妻を保護し、街
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