士郎くんの戦訓 3/5
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卓を囲んで夕飯を共にした。白野の両親とも打ち解けていて、互いの連絡先を交換し合うほどだった。
その席で士郎は云う。そろそろここを発とうと思っています、充分休んだので、と。白野はごねた。一緒にいてと。だが士郎はまた会えるからと繰り返し説得して、彼らとの別れを惜しみながらもその街を出た。
思い立ったら、時間帯に関係なく動く。士郎の癖だった。
街を歩いて出る。元々目的の地はなかったのだから、隣街まで歩いて、そこでタクシーなりバスなりに乗ろうと思っていた。
――いい街だった。いい出会いがあった。いやどこに行っても出会いは必ずある。彼ら一家との思い出を胸に抱けば、善き営みの思い出に勇気を貰える――
二時間ほど歩いただろうか。
辺りはすっかり暗くなっている。人気のない道だからか、車が通りかかる事もない。
道沿いに歩いていると、不意に士郎の所持していた携帯電話が着信した。
見ると、着信相手は岸波夫妻の旦那である。なんだろうと思い電話に出る。すると――
『――助げ、でよぉ! じろうざッ、』
ヅ、と。
それだけで、通話が途切れる。
『――』
なんだ、今のは。白野の、声?
真に迫る、魂を削る懇願。悪戯なんて可能性は絶無だ。涙に濡れた、幼い悲鳴に偽りはない。
咄嗟に元来た道を振り返る。夜、その空は綺麗な星光に輝いていたのに、振り返った先の空は、冒涜的な紅蓮に染まっていた。
強化の魔術を眼球に叩き込む。心臓が一際強く脈打った。正確に見て取れる距離ではない、しかしそれは、嫌になるほど目にした事のある――戦火である。
判断は刹那。行動まで一瞬。
無駄な荷物はその場に捨てた。革の鞘を投影し左右の腰に交差する形にする。そこに投影した干将莫耶を差し、それを隠すように灰色の外套を投影する。そして大口径の拳銃デザートイーグルと対物ライフルを投影した。
剣ではない故に通常よりも魔力は食うが、宝具ではない故に負担は然程ない。脚を強化し全力で走り出す。士郎の冷徹な部分が確信していた。
間に合わない、と。
――それは突然だった。予兆も何もない唐突さだった。
長閑なその街に現れたのは、黒衣の男達。十字架を首に提げた、無慈悲な断罪者。時代錯誤な騎士団がいる。彼らは呆気に取られる住人を前にするや――殺戮を始めた。
街に火を放ち、住人の浄化を始めたのだ。
成す術なく、殺められる人々は、混乱して逃げ出した。しかし街は包囲されている。逃げ場はなく、点在する十字架の黒衣や騎士達、そしてそれとは違う学者然とした者達が人々を殺害し、燃やしていく。
『――この街に逃げ込んだ死徒は見つかったか』
『いえ、未だ』
『祖に迫る不死性を持つと云う。逃
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