士郎くんの戦訓 3/5
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サー王伝説だ。それ以前にも、多種多様な神話や、歴史上の偉人についても語って聞かせていたが、どうやらこの白野はそういった方面に興味があるらしい。ゆくゆくは歴史学者かなと思いながらも、とっておきの話をした。
『――白野は知ってるか? アーサー王は実は女性だったんだ』
『え? またまたそんな……冗談きついよ』
白野は苦笑いする。まるで信じていないが、それも当然だろう。薔薇の皇帝やらフンヌの王、日本で言えば源氏の頼光や義経、織田信長やら沖田総司が実は女だと言っているようなものだ。有り得ないだろう、士郎の主観では特に源氏二人と信長と天才剣士とか。
『そして物凄い健啖家で、不老だったから容姿は十代半ばの少女のそれだったんだ』
『ぷふっ!』
『お国の雑な料理に胸を痛め、円卓の騎士にはぶられて涙目になってたりするんだ』
『あははは! なにそれ! ないない、そんなの絶対ないって!』
分からないぞ、と。まだまだ青さの残る顔つきで笑む青年を、微妙そうな目で見詰めるアルトリア達である。
しかし何も言わなかった。語る士郎の目が、ひどく懐かしげな光を湛え、心の内が穏やかだったからだ。白野は信じなかったが、士郎の噺を面白そうに聞いている。
『――歴史から学べるものは多い。だが其処に居た英雄や偉人の生き様、偉業から学べるものは一つしかない』
『一つだけなの?』
『ああ。俺の考えだがな。だって彼らは天才だったり、特別な生まれだったりする。そんなのは真似できないだろ? 追えるのは結果だけ、過程を踏むのは学問でしかない。俺のような凡人にその軌跡をなぞる事は出来ないだろう。だから学ぶべきは諦めない事だけだ』
『諦めない事……』
『例え伝説の英雄、時代を代表する天才であっても、苦難に見舞われない訳じゃない。挫折しない訳でもない。彼らは皆、才能の如何に拘わりなく絶対に諦めなかった。その体よりも心が強かった。才能や血筋は真似できないが、その心の在り方だけなら辿る事は出来る。だから白野、ここぞという時には、絶対に諦めるな。世の中には理不尽な事ばかりだから、人間一人じゃどうしようもない事は沢山ある。だがそれでもと言い続けろ。諦めない限り、生きている限り、絶対に道は拓けると信じるんだ』
本人に自覚はないのだろう。しかしその言葉には、途轍もない重みがあった。
それこそ人生経験の浅い少女にどう響いたのかは判じようがない。だが白野は頷いた。それはとても大切な事のように思えたからだ。
士郎は冗談めかして相好を崩す。
『ま、場合によりけりだがな。時には諦めも肝心だって言うだろ?』
『……なにそれ』
可笑しそうに、白野も頬を緩めた。
とりとめもない会話は夕暮れまで続いた。士郎は白野を両親の泊まる宿に送り届け、彼らと
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