士郎くんの戦訓 2/5
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『だと思った。というか知ってたのね? 他にも色々とやるんでしょうけど――ちゃんと帰って来なさい。シロウの家に。そこでわたしは、ずっと待ってるから』
イリヤを冬木に送り届けた士郎は、その日の内に日本を発った。
今度は桜の番だ、と言ったが。それだけではない。冬木には居られない、居たくないという気持ちが強かったのだ。何故なら――何故なら……? やらねばならない事がある、気がしていた。だから士郎は一心に活動する。自分が自分ではないような違和感が拭えないから。自分にしか出来ない事をして、自分の自我を証明したかったから。
自分の為に。そう、士郎は自己満足の為に、目に映る人々の不幸を絶やさんとした。傲慢にも走り始めようとしていた。
しかしその前にやる事がある。士郎はイリヤの体を運んだ。イリヤの魂の入っていない、本当の意味での器を。
それをアインツベルンの本拠地、冬の城へと持ち運んだ。当然、侵入はしない。出来ない。仮に打ち入れば生きては帰れないだろう。その雪に阻まれた森の前で、だから叫んだ。
イリヤスフィールが死んだ、と。故にその亡骸を返却しに来たと。衛宮とアインツベルンの縁はこれで完全に切れた、と。
冠位魔術師、最高位の人形師である蒼崎橙子の作品は、完璧にイリヤの肉体を模倣していた。アインツベルンですら、それをイリヤの骸と誤認するだろう。
これで、因縁は終わった。かかわり合いのなくなった衛宮の事など、ホムンクルスであるアインツベルンの一族が気に掛ける事はあるまい。
来たる第六次聖杯戦争まで、アインツベルンは冬木の地を捜査する事もない。そういったプログラムを持っていない。故にイリヤが冬木にいても気づく事は決してないだろう。無論、次の聖杯戦争までに――アインツベルンを野放しにするつもりはなかったが。否、聖杯戦争を続けさせるつもりはないと言った方が正確か。
士郎は中東へ向かった。何も紛争に介入し、最小の犠牲で事を治めようだとか、出過ぎた事を考えての事ではない。死が常態となった所には、常に貧困と――死を食い物にする外道が存在する事を知っていたのだ。間桐の翁に有効な礼装、霊薬や霊器を所有している可能性もある。
何故知っているのか、そこに疑問はない。頭に埋め込まれたように識っていたのだ。それを違和感として感じられない状態だった。
蛇の道は蛇と云う。武器商人に接触し銃器を一通り揃える。取り扱い、整備の仕方も知識にあった。士郎は神秘の秘匿に関しては人一倍気を付けるつもりでいる。特に己の魔術は異能のそれ、知られれば封印指定されるのは明白だ。故に武装の類いは基本、銃火器とナイフなどで賄うつもりでいる。
死を食い物にする輩を討ち、その研究成果を奪う。士郎に不要な物は全て時計塔に二束三文で売り払う。そうするつもりでいて、し
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