士郎くんの戦訓 2/5
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ミス・トオサカはいい歳してコスプレ・オタクであると見なされ、凛だけがそれに気づかず。ほくそ笑んだ士郎は、このままそっとロンドンを離れる決意を固めた。
が、ロンドンを発つと報せると、凛は親切にも送ってくれるという。ゆっくり並んで歩き、和やかに談笑しながら橋の上まで来ると、ばったりルヴィアと遭遇してしまった。
恒例の口論が始まる。またかと士郎が呆れていると、特に口止めをされていなかったルヴィアが口を滑らせた。ミス・トオサカは高尚なご趣味をお持ちのようですわね? と。それになんの事かと凛が訊ね、噂の詳細と出所を聞くと烈火の如く猛り――既に全力疾走を始めていた士郎にガンドを撃ち込み転倒させると、士郎をテムズ川に突き落とした。
二度も落とすとは、やってくれる……! 凛へ復讐する決意を新たに更新し、士郎は覚えてろと捨て台詞を吐いてロンドンを去った。
士郎は冬木に帰郷する。特に連絡もなしに突然帰ってきた士郎に、大河やイリヤ、桜はひっくり返りそうなほど驚いていた。大河は怒りながらも泣き、同時に喜ぶという器用な態度で。桜は思わず士郎の傍に駆け寄り抱擁してきた。
やんわりとそれに応え、少しして引き離すと、士郎はまたすぐに冬木を離れると言う。またすぐ戻ってくるからと大河の荒ぶりを鎮め、士郎は宣言通りに冬木を離れる。――イリヤを連れて。
ホムンクルスとしての寿命が近い。体力のないイリヤを連れた士郎は、日本の観光地をゆっくりと共に回った。一週間をたっぷり使っての旅行を経て、辿り着いたのは閑散とした田舎街だった。
どうして自分を連れ回すのか。最後の思い出作りのつもりなのかとイリヤが問うと、士郎は違うと微笑む。腕時計で時間を確かめながら、士郎は言った。
『なあ、イリヤ』
『何、シロウ』
『俺の我が儘を聞いてほしいんだ。いいか?』
『……? いいわよ。なんでも言って。お姉ちゃんは懐が深いから、久し振りに会ったバカな弟のお願いも聞いてあげるわ』
『ありがとう。じゃあ何も言わず、今からの事を全て受け入れてくれ』
『? ええ。わかったわ』
喫茶店に入る。客入りの少ない店だ。迷う素振りもなく奥へ進むと、客席には先客がいる。
女性だった。赤毛の美女である。橙色のコートを羽織った女は、対面の椅子に断りを入れて座った士郎とイリヤに視線を向けた。
『お待たせしました』
『――呼び出しておいて私より後に来るとはいい度胸だ』
『申し訳ない。何分、時間には正確な性質で』
『ふん……』
煙草を取り出し、火を点けると不味そうに吸い紫煙を吐き出す。イリヤは一瞥しただけで、女が何者かを看破していた。魔術師――そう呟き、警戒心も露にする。
『俺は衛宮士郎。こっちがイリヤスフィール。今回は貴女に依頼があって、呼び出させてもらいました』
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