士郎くんの戦訓 1/5
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女達は小学生だ。士郎の過去は衝撃的な劇物であり、彼女達の平静さを奪ってしまって当然である。だのに、冷静さを保つ客観性が美遊にはある。それは瞠目すべき事だ。
運動能力、理解力、精神力、頭脳。全てが均一に高い才能がある。ダ・ヴィンチは美遊が天才である事を察した。同類だと、『万能』のダ・ヴィンチが認めたのだ。美遊を見る目が変わる。
「視聴会の意義、というより『理由』は三つだ」
眼鏡を掛け、ダ・ヴィンチは講義した。
「一つ、ランサーと士郎くんは賭けをしていた。二つ同時に攻略しなければならなかった変異特異点、どちらが先に成し遂げるかの競争をしたんだよ。くだらない賭け事だけど賭けは賭け。負けた士郎くんは、ランサーの提示したものを実行する義務があった」
「はい」
「二つ目。士郎くんは百戦錬磨の戦上手だ。その頭のキレは、戦術や戦略という一点に於いてはこの私をも上回る。現場指揮官として、卓越した能力がある。生まれた時代が違えば、希代の名将になっていたかもね」
ダ・ヴィンチの評に、エミヤが顔を顰める。さしものエミヤとて、ダ・ヴィンチにそこまで評価されるほどではない。自身との差異がここにもあるのだとエミヤは感じていた。
――が、それは違う。エミヤにも、実はその素質はあるのだ。
彼は己を非才の身だと認識している。それは事実だ。生前の剣の才は並、運動能力も並、鍛え上げた人間程度でしかない。しかしエミヤには別の才能があった。それは『戦士』の才能だ。剣才がなくとも立ち回りで補い、戦術を組み立て、有効な武器を運用する。それを突き詰めて最後には必ず勝ってきた。戦いというジャンルにおいて、過程はともかく最後には必ず勝利へと至る才覚がエミヤにはあり、それを窮めたからこそ心眼のスキルを獲得するに至り、希代の大英雄と対峙しても防戦に徹すればある程度は持ちこたえられるのだ。
エミヤのステータスは並みの英霊のそれでしかないのに、それだけ戦えるのは――彼が戦上手だからである。
士郎はエミヤとは違う道を窮めた、それだけの事だ。己のみで勝ち抜き、生き残るのではなく。他を恃み、仲間を率いて皆で勝ちにいく方面へ。謂わば個か衆かの違いであり、ジャンルが異なるのみだった。
「そんな士郎くんも、最初からそれほどの切れ者だった訳じゃない。当然数多くの失敗もした。そして錬磨していったからこそ、どれほどの苦境でも勝利をもぎ取ってきた。その過去をざっくり追体験するのは貴重な学習の機会になる。だから皆で見る場があるなら、それにキミ達を招待しない理由はない。何せ貴重な戦力に成り得るからね、君達も。命の危険がない所で、数多の実戦を肌で感じられるのは決して損にはならないだろう?」
「なるほど……」
「あ、そうそう。特異点での戦闘記録は別枠だからさ、そっちはまた時間が
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