士郎くんの戦訓 1/5
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ヴァントの力を無断で使う事は禁止されています! 元の姿に戻ってください!」
「どうして? 士郎さんが、こんな事になってたの……そろもん、って人のせいなんだよね? ならいなくなってもらわないと……」
桜の唐突な変化に、イリヤと美遊は度肝を抜かれた。自身よりも年下の女の子が、自身らを遥かに超える戦力を発露させたのだ。
だが、所詮は自我の曖昧な少女。クー・フーリンが嘆息し、マシュの拙い言葉では止めれないと判断して動こうとするのに先んじ、弓兵が動いていた。
「よせ、桜。奴はそんな事を望んではいまい」
エミヤもまた、桜を止めた。桜は首を傾げ、不思議そうに赤い外套の騎士を見上げる。
「アーチャーさん……でも……」
「ソロモンに怒りを向けるのはいい。だがカルデアにソロモンはいない。いるのはロマニ・アーキマンという人間だけだ。それに、衛宮士郎は桜がその力を使う事を好ましく思わん」
鉄槌のような声音だった。
甘さのない叱責。しかしその瞳には、桜を真摯に諭す優しい光が点っていた。
「何より無為に力を振りかざそうとするのは、人として下の下の遣り方だ。自分も役立つのだと見せたいのかもしれないが、時と場合を弁えろ。いいな」
「……はい」
しゅんと落ち込み、桜は元の姿に戻る。ごめんなさいと頭を下げた。
「ああ。素直に謝れるのは君の美徳だ。その姿勢を損なってくれるな」
「……うん」
「……」
マシュは密かに落ち込んだ。お姉ちゃんの自分が諭すべきだったのを、その役目をエミヤに取られたのだ。そんなマシュの様子に苦笑を漏らしながらも、桜のよくない変化を士郎へ報せるべきかと嘆息する。
幼い子供が、それも内向的で善悪の判断基準も壊れている娘が強大な力を手に入れたのだ。放置すれば厄介な事になると、エミヤは判断する。言うまでもない事なのだろう、しかし敢えて言う事で一層気にかけるはずだ。
桜も、アーチャーの言う事には素直だが、それよりも士郎の言葉の方がこの娘には響く。
「意外だな」
「え?」
エミヤを尻目に、クー・フーリンはマシュへそう声を掛けた。アルトリアやオルタも同意見なのか、静謐な眼差しでマシュを見遣る。
「もっと取り乱すもんだと思ってたぜ」
「そうですか? 確かにショックで、酷いと思いますけど……これは過去です。現在の先輩は、此処にいます。なら心配はありません。未来の事は分かりませんけど、きっとなんとかなります」
それは希望的観測だった。根拠のない展望でしかなかった。しかしその、未来を語るマシュをダ・ヴィンチは微笑んで見守った。
クー・フーリンは可笑しげに唇の端を吊り上げる。
「――へえ? 大したもんだ。冬木で震えていやがったあの小娘が、いっぱし
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