第59話 生誕祭 前編
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なら街にいるぞ。今日は生誕祭だからな」
「そういえば、エステルとヨシュアが正遊撃士になったって聞いたよ」
「ああ、あいつらもようやく最初の一歩を踏み出し始めた。これで俺も安心して軍職に戻れるってものだ」
「えっ、どういう事ですか?」
リィンはカシウスが軍人に戻ると聞いて驚いた顔を見せる。
話を聞くと今回のクーデターで起きた混乱は未だ収集しておらず軍の指揮系統もメチャクチャになってしまったらしい、それを立て直すためにカシウスは遊撃士を辞めて軍人に復帰するとの事だ。
「今回のリシャールが起こした事件、あれは彼自身が俺という存在に依存し過ぎた心の弱さが起こしたものだ。だがその責任は俺にもあった」
「どういう事ですか?」
「俺はかつて妻を守れなかった自分を責めて、逃げる様に遊撃士になった。そして国を守るという責任をリシャールに押し付けてしまったんだ。俺は彼の才能や能力なら十分この国を背負っていける人物になれると思っていたが、彼の内心までは見ようとしなかった。それが彼の心を押しつぶしてしまい結果的に今回の事件を起こしてしまった」
「それは……」
「リィン、俺は剣聖や理に至った者として見られているが結局は唯の人間だ。どんなに凄い力を持っていても間違えてしまう事はある。お前は俺のようにはなるな」
「……はい」
兄弟子からの忠告をリィンは真剣に聞き入れて頷いた。
「そうだ、二人にも話しておかないといけないことがあるんだ。ロランス少尉についてだ」
「ロランス少尉ですか?」
リィンは今回の事件の引き金となった黒いオーブメント……リシャールが話すには『ゴスペル』という物はロランス少尉が持ち込んだと分かったらしい。
「リシャールもその辺の記憶が曖昧らしい。リィンもこの国に来た経緯などは覚えていないと前に話したな?」
「はい、その通りです」
「ん、わたしも覚えていない」
「リシャールに今回リベール各地で起きた事件の犯人たち……そしてクルツと多くの人間が記憶を失っていた。そしてその陰には情報部の存在があった。もしかすると君達の記憶を奪った、または消したのはロランス少尉かも知れないな」
リィンはロランスの得体の知れない雰囲気を思い出して身震いをする。今思えば見逃してもらえなかったらこうやって生きてはいなかったと改めて実感したからだ。
「俺は奴を探ってみるつもりだ。ルトガー君にも話を聞いてみる」
「なら俺達も……」
「君達も十分働いてくれた、後は大人の仕事だ。二人も生誕祭を楽しんでくると良い」
カシウスはそう言うとグランセル城に入っていった。この後アリシア女王に会ってからレイストン要塞に向かうらしい、かなり忙しそうなスケジュールらしく未だこの国が混乱の中にある
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