士郎くんの足跡(後)
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を歩ませた。
『……誰だ、オマエは』
『慎二?』
『オマエ、誰だ! 衛宮じゃないな!? 気色悪い顔しやがって!』
第五次聖杯戦争の記憶はなくとも、それ以前の記憶までなくなった訳ではない。
故に、人間性の解離に、その少年が気づくのは必然で。完全に別人な、壊れた人間を友人だと認めず敵対した。
少年は、何がなんでもあの気色の悪い輩をなんとかしようとし、暴走した。何かよくないモノに憑かれている――その憑いているモノを除こうと学舎にライダーの結界宝具を張らせるほどに、思い詰めた。
『ひっ、ひぃィ!?』
夜の街、聖剣によって消滅したライダー。慎二は逃げ出した。気味の悪いあの男が、自分を殺すだろうと恐怖して、逃げたのだ――
『――ふん。道化め。己の在り方すら見失った雑種など、殺す価値もない』
全てを踏破した先に待ち構えていた英雄王は、些かの憐憫を滲ませ士郎を道化と称した。
『だが我もまた、此度は道化か。不意を打たれたとはいえ、敗れたのだからな。ならば、是非もあるまい。此度のみ、この茶番に乗ってやる』
英雄王と戦った。そして彼の王は、侮蔑も露にセイバーを罵った。
『戯け。貴様がついていながらこのザマとはな。成すべき事を成そうともせん貴様に、この我の寵愛を受ける資格はない。女を磨き出直すがいい。その時こそ我が相手するに足る』
何を言っているのか、士郎にはさっぱり分からなかった。だがセイバーの心は、動いたのかもしれない。
『シロウ――貴方を、愛しています』
全ての決着が着いた時、アルトリアは秘め続けるつもりだった心を告げる。尚も錯乱していた士郎は、それでも我から出た言葉で、懺悔した。
俺は、お前を愛してなんか――そう涙ながらに告げる少年に、アルトリアは微笑む。
『いいえ。貴方は私を愛しています』
――その、万の言葉よりも勝る保証が、少年を錯綜する混乱より救い上げた。
そして、カルデアで二時間半が経つ。衛宮士郎の旅は、こうして始まるのだ。
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