士郎くんの足跡(後)
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再度放ったセイバーが、魔力を枯渇させながらも獅子奮迅の武勇を魅せる。
魔術王に肉薄していくも、転移で距離を取られ続けるのに歯噛みして。セイバーは聖剣の真名解放を行えないほどに弱っていく。執拗な魔神による絨毯爆撃に、セイバーよりも先にアーチャーが倒れた。
『アーチャー!?』
凛が悲鳴を上げる。死に物狂いで、それこそ嘗てなく必死に奮闘していたアーチャーが力尽きたのだ。サーヴァントが消滅した凛は、魔神に呑まれる。
『遠坂!? テッメェェエエエ!』
吼える。士郎が意地でも仇を取ろうと、イリヤスフィールを助けようと駆ける。それを、
『――素晴らしい気迫だ』
男、マリスビリーは称賛した。
『安心していい、ライダーのマスターを見逃したように、アーチャーのマスターの命も見逃そう。私の目的は、無為な殺生じゃあないからね』
セイバーも、膝をつく。士郎もまた、もはや動けなかった。否、とうの昔に限界だったのを、意地だけで無理矢理走り、抗っていたに過ぎない。
まだだ、まだだ、まだ終わりじゃねぇ……! 士郎の目は死んでいなかった。だからこそ、マリスビリーは彼を称賛したのだ。
『ああ、聖杯の彼女も無事だ。死んではいない。聖杯を起動する装置になっているだけさ』
『イリヤを離せ……ッ』
『私達が望みを叶えたら、解放しよう。……ただで、とは言えないがね』
――そして、士郎達は魔術王へ敗北した。
記憶を消され、何もなかったように記憶を捏造されて。士郎にアラヤが介入する。自己が曖昧になり、己の記憶が英霊エミヤのそれと混同され、何が本当の己かも見失い……士郎は、第六次聖杯戦争に身を投じる事になる。
死。理不尽な死を予感する。士郎は、なんの覚悟もない時に、明確な死の運命を自覚してそれを恐れた。
『オマエ暇だろ? 弓道場の掃除代わってくれよ』
その慎二の問いに士郎は頷く。慎二を引っ張って無理に行こうとはせず、溝は埋まらなかった。
『問おう――貴方が、私のマスターか』
再開した時、セイバーは全てを覚えていて尚、何もかもを忘れ、そして己を偽る少年に接する態度に惑った。どうしたらいいのか、悩んだ。
『じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー』
父の真実を知る事なく、無邪気に殺意を告げる少女がいた。
士郎は己を塗り潰した死の恐怖と、自身の人間性と英霊エミヤの記憶の齟齬から、切嗣を看取った時に彼を偽っていると誤解し――それまでの己を見失っていたから。だから士郎は止まれなかった。偽る事をやめられなかった。罪悪感に一人悶え苦しんだ。
この通りに演じれば助かると、英霊エミヤの記憶を辿り。持ち前の頭の回転は、常に錯乱していた士郎を、エミヤの知らない道へと歩ませても生存への道
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