士郎くんの足跡(後)
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
凍る。
衛宮邸に帰宅し、気が抜けた瞬間だった。
不意に現れた魔術王が、イリヤスフィールを転移魔術で連れ去ったのである。
『な――』
本当に一瞬の隙だった。
誰の手も触れておらず、誰からの目も向けられていなかった、本当に一瞬。
連れ去られたという事実に、士郎は憤怒し。それはアーチャーもまた同様だった。
血眼になって市内を探し求め、しかしその日は遂にイリヤスフィールと魔術王を見つけ出す事が出来なかった。
必死になって捜索して二日目。
槍兵が自身の槍で心臓を穿ち、自害させられているのを発見する。令呪を奪われたのだろう。サーヴァントには、抗えない。これを目の当たりにして、凛は自身も令呪を使いきる。アーチャーに一見無意味な、漠然とした縛りを与えた。
絶対に勝利する事、といった命令を。
そして、見つけた。イリヤスフィールが、円蔵山の大聖杯の元で、イリヤスフィールを聖杯として起動していたのだ。彼のマスターの男が歓迎の構えを見せる。ここで決着をつけよう、と。
士郎とアーチャーの赤黒い憤怒の形相は、数日の間を空けても翳る気配すらなかった。怒号を発して、最後の戦いが始まる。
男が言った。
『今のキャスターは聖杯のバックアップを得た。魔力の心配はない。君達に勝てると思うかな、魔術王に』
『ゴチャゴチャうるせぇ、イリヤを返せぇ!!』
気迫は、勝敗を左右しない。聖杯の魔力を得た魔術王は圧倒的だった。
蹂躙が始まる。七十二柱の魔神が全て、同時に召喚され、それらが一斉に牙を剥いたのだ。
ライダーが斃される。アーチャーが三十数柱の魔神に包囲される。固有結界は発動できず、投影した宝具で対応するしかない。セイバーが聖剣を解放し、光の斬撃で半数以上を消し飛ばしても、再召喚によって魔神は再び現れた。
士郎は咄嗟に、消滅間際のライダーに言った。
『慎二を頼む……! 此処から連れ出してくれ! ……邪魔だ!』
『……ええ、分かりました』
邪魔だと言う士郎の顔は、必死だった。この死地に、親友をおいておけないという、必死さ。
慎二は目を剥く。ランサーに追われた、最初の日の事が脳裡を過ったのか。ライダーに担がれ、遠ざかっていく戦場に叫ぶ。
『ふざけるな! ふざけんなよ衛宮ぁ! 対等だろ!? 僕らは、どっちかが一方的に助けたり助けられたりするような甘えた仲じゃないだろ!? 最後まで戦わせろよ、足手まといでも、僕は、僕らは親友だったんじゃないのかよ! 衛宮、衛宮! クソ、離せライダー、離せよぉッ! おい……! チクショウ、チクショウ! 衛宮ぁあああ!!』
叫び声が聞こえなくなる。士郎は一瞬笑い、そしてそれでも走る。アーチャーに指南された投影魔術を使い、双剣を手に駆けた。聖剣を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ