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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんの足跡(後)
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まで、セイバーは飯抜きである。問答を再開する気は士郎にはなさそうだった。

『……』
『うわぁ……』

 お通夜のように重い空気で沈黙するセイバーに凛は引いた。

『心を攻めるが上策って云うけど、色んな意味でこの兵糧攻めはきっついわ。鬼ね、衛宮君』
『セイバーが悪い。マスターだぞ俺。マスターの俺に反抗的だから飯抜きなんだ』
『亭主関白かっ! 割と最低な論法よそれ!』
『家の問題に口を突っ込まないでくれますか、遠坂さん』
『家の問題なのこれ!?』

 凛のツッコミを聞き流し、士郎は嘆息して立ち上がった。台所に向かい、お椀と箸、皿を出す。それをセイバーの前に置くと、顔を上げた少女騎士に微笑んだ。

『すまん。意地悪が過ぎた。食ってくれ』
『……要りません』
『ごめん、謝るって。昨日の件は撤回するから。セイバーに今、倒れられても困る。ほら、食べて力にしてくれ』

 士郎の言葉に、あくまで渋々といった様子で箸を受け取るセイバーである。しかしそれに、士郎は意地悪く笑った。
 ゆっくりと食事をはじめたセイバーへ、士郎は言う。

『昨日の事は撤回した。でもまた言わないとは言ってないぞ』
『!? ごほっ、ごほ! し、シロウ!?』
『女の子扱いするから、そのつもりで』
『……!』
『あ、今更食うの止めるなよ。お残しは許さん断じて許さん。それは全ての農家その他諸々への侮辱であり冒涜だ。王様ならそんな事しないよな』
『くぅ……! やはり、貴方は卑劣だ……!』

 そうして嫌がる素振りで、その実しっかり味わい箸を動かすセイバー。

「な、なんですか!? これは私の責任ではありませんよ!? どう見てもこのシロウが悪い!」

 カルデアで、己に集まる生暖かい目線にアルトリアは抗議した。しかしその訴えの説得力は欠片もない。
 やがて女の子扱いに、特に不満も覚えなくなりつつあるセイバーの様子に、カルデアの生暖かい空気は濃密に漂っていく。アルトリアはまた抗議するも、やはり説得力はなかった。

 不気味な平穏が続く。三日が経つと、士郎達は街に息抜きへ出ていた。病気に由来する体調の変化でないなら、イリヤスフィールを置いていく理由はないと、士郎はイリヤスフィールを背負って歩いた。
 服を見たり、外食したり。バッティング・センターでストレスを発散したり――憩いの空気に、浸る。迫り来る嫌な予感を振り払うように。もう戻らない時間を、せめて楽しいものにするかのように。

 切嗣の墓参りに来る。大所帯だ。士郎は月に一度は藤ねえと来るんだと溢した。

 イリヤスフィールは、士郎に教わった作法で両手を合わせる。祈る時間は、長かった。
 疲れたのだろう。墓参りが終わると、すっかり寝入ってしまったイリヤスフィールをアーチャーに預ける
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